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概要

しろありNo.164

42 Termite Journal 2015.7 No.164 図8, 9に降伏耐力と超音波伝播速度の関係を示す。トドマツではR方向の超音波伝播速度が小さくなるに従って, 降伏耐力が低下する傾向がみられ, 相関を示し, T方向の測定値との関係ではばらつきが大きく,低い相関を示した。一方で, オウシュウトウヒではT方向の測定値に対して高い相関がみられ, R方向の測定値に対しては低い相関を示した。これは, トドマツとオウシュウトウヒにおいて食害の進行に違いがあるために生じた現象と考えられる。例えばトドマツでは食害が辺材側に集中する傾向があるためT方向の測定では心材側の比較的健全な部分を測定していることが考えられる。このようなことから, 超音波を用いた計測においては, 計測方法を含めて検討する必要がある。4. まとめ 生物劣化を診断する機器と木材の残存強度との関係を明らかにすることを目的として, シロアリ食害を受けた木材に打ち込まれた木ねじの一面せん断試験を実施し, その評価を行った。その結果, 容積密度と降伏耐力は, 高い相関を示すことが確認できた。また, 打ち込み深さと残存強度は高い相関を示し, 超音波伝播速度については樹種による食害の違いなどから傾向に違いはあるものの相関を得ることができた。この結果より,本測定値を用いることで木ねじ接合具のせん断性能の推定の可能性が示唆された。5. 謝辞 本研究は, 平成26年科学研究費補助金(基盤研究(B)26289191:代表者:森 拓郎)により実施し, 京都大学生存圏研究所全国共同利用研究・DOL/LSFの補助を受けました。本研究を行うにあたり, 研究および実験に対し, 様々な助言をいただきました井上正文教授,田中 圭助教(大分大学), 森 拓郎助教, 簗瀬佳之助教(京都大学), また試験体製作にご協力いただいた北海道立林産試験場に, この場を借りて御礼申し上げます。参考文献1 )森 拓郎・簗瀬佳之・田中 圭・河野孝太郎・野田康信・森 満範・栗崎 宏・小松幸平(2013):生物劣化を受けた木材の曲げ及び圧縮強度特性とその劣化評価, 材料, 62(4), 280?285.2 )日本建築学会(2006):木質構造設計規準・同解説 許容応力度・許容耐力設計法, pp.367?368図8 降伏耐力と超音波伝播速度(T方向)の関係0.00.51.01.52.02.53.03.50 500 1000 1500 2000 2500降伏耐力(kN)超音波伝播速度(m/s)トドマツ(コントロール)オウシュウトウヒ(コントロール)トドマツ(食害)オウシュウトウヒ(食害)トドマツ0.37オウシュウトウヒ0.60相関係数図9 降伏耐力と超音波伝播速度(R方向)の関係0.00.51.01.52.02.53.03.50 1000 2000 3000 4000降伏耐力(kN)超音波伝播速度(m/s)トドマツ(コントロール)オウシュウトウヒ(コントロール)トドマツ(食害)オウシュウトウヒ(食害)トドマツ0.75オウシュウトウヒ0.39相関係数