ブックタイトルしろありNo.157

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概要

しろありNo.157

?報 文? 白蟻薬剤による宮崎県延岡市,串間市の地下水汚染報告(30年目の真実)廣  瀬  博  宣 ( 1 )しろあり No. 157, pp.1―11. 2012年1月1. はじめに 昭和57年9月宮崎県延岡市高野町で白蟻薬剤クロルデンによる地下水汚染が発生し,集落の37所帯の井戸が長期間使用できなくなり,大きな社会問題となった。昭和57年11月,社団法人日本しろあり対策協会宮崎県支所は現地調査を行い,同年12月,地下水汚染は建物外周の土壌加圧注入が原因とし,同工法の蔓延は地下水汚染を招くと,同工法の危険性を指摘した報告書を協会に提出した。しかし,宮崎県支所の報告書は封印され,公開されることはなかった。建物外周の土壌加圧注入処理は続けられ,同工法が原因とする地下水汚染が,さらに2件発生した。 社団法人日本しろあり対策協会は,昭和61年9月白蟻薬剤クロルデンによる環境汚染対策として,建物外周の土壌処理は原則禁止とした。結果として,地下水汚染の原因,建物外周の土壌加圧注入処理は行われなくなった。 それから25年が経過し,白蟻薬剤による環境汚染が忘れられ,アパートの既設予防に外周処理を推奨するなど,安易に建物外周の土壌処理を行うケースが増えつつある。特に作業が簡易であることから,建物外周の土壌加圧注入処理が積極的に行われている。このまま同工法の施工が増加すると,井戸水または地下水系の汚染発生を招き,大きな社会問題となることが危惧される。その場合,白蟻薬剤による2度目の地下水汚染であり,行政指導により日本国内では土壌処理が行えなくなる可能性が高い。このような事態は絶対に起こしてはならない。 現在,協会は建物外周の土壌処理を原則禁止としており,白蟻薬剤による環境汚染,地下水汚染も発生していない。また,業界としても,過去の教訓から,環境汚染のリスクを侵してまで,白蟻予防を行う状況にはない。 昨年,宮崎県延岡市,串間市の地下水汚染現場を訪問したが,井戸水が汚染し長期間不自由な生活をされた住民の方は,?二度と白蟻薬剤による汚染を起こしてほしくない? と,当時の状況を話された。環境を守りつつ白蟻防除を行うことが業界としての責務であり,安易な建物外周の土壌加圧注入施工に対する警鐘として,宮崎県延岡市,串間市の地下水汚染について報告する。2. 白蟻薬剤による短期・長期の環境汚染 昭和50年代後半に発生した,白蟻薬剤による環境汚染の経過と環境汚染の短期・長期の種別を以下に示す。2.1 環境汚染の経過 昭和55年から昭和62年までに発生した,環境汚染に関する事項・経過を以下に示す。(環境汚染の経過)昭和55年環境庁は大阪,兵庫など瀬戸内海沿岸の底土から白蟻薬剤クロルデンを検出昭和56年環境庁は東京湾,伊勢湾の底土および東京湾への流入河川水からクロルデンを検出昭和57年9月 延岡市高野町で白蟻薬剤クロルデンによる井戸水汚染発生(汚染家屋4戸)昭和57年11月 社団法人日本しろあり対策協会宮崎県支所は,延岡市高野町の現場調査を行う。昭和57年12月 延岡市高野町の井戸水汚染家屋30戸に増加昭和57年12月 延岡市高野町の井戸水汚染原因は,施工者からの申し出に沿い,湿った床下土壌への薬剤散布(施工判断ミス)とした。