ブックタイトルしろありNo.158

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概要

しろありNo.158

( 10 )3.2 茅葺き屋根に生じた劣化の様子 調査対象の茅葺き屋根は前述の理由から,調査時点で劣化が深刻化している屋根はなかった。しかし,劣化の兆候を示す屋根も少なくなかった。図3には平林寺の中門の茅葺きについて,軒先部分の変色を示す。変色は屋根表面全体に広がっている。平林寺中門屋根については,軒部分が地表面に対して平行に作られていないことから,軒下に入ることなく周囲から軒の先端部を見ることができる。そのために,雨水が軒先の屋根の所々で深く浸透し,それによって屋根には表層部分の比較的均一な厚さの黒変に加えて,部分的な不均一の黒いV字型の染み跡ができている。通常,多くの茅葺き屋根は図4に示すごとく,軒が地表面と平行に作られていることや,軒先部分では樹皮が敷き詰められ,菌類繁殖に必要な雨水の浸透を抑えており,部分的に深い染みができることはほとんどない。なお,軒面が外側から見られる例としては後述する伊勢神宮の諸社殿がある。図3 平林寺中門に見られる表層部分の均一な厚さでの黒変と部分的な深い黒変図4 一般的な茅葺き屋根(府中市郷土の森博物館内越智家住宅)と軒先の樹皮混入の様子。軒裏が地表面と平行に作られており,外部から軒裏を見ることはできない。樹皮混入により軒先部分では屋根内部深くへの雨水の浸透がない。表1 調査対象文化財建造物の所在他建造物名称所在調査日指定団体平林寺山門同仏殿埼玉県新座市野火止3-1-1 2011.9.28 県指定同中門小野家住宅埼玉県所沢市林2-426 2011.10.18 国指定旧池上家住宅埼玉県入間郡三芳町大字竹間沢877 2011.11.8 町指定旧島田家住宅埼玉県入間郡三芳町上富1279-3 2011.11.8 町指定旧冨岡家住宅埼玉県和光市新倉2-33-1 2011.11.17 市指定 屋根表面全体に及ぶ黒変部分については,他の屋根についても程度の違いこそあるが,全てに共通して認められる。小野家住宅を例に,この部分を拡大