ブックタイトルしろありNo.158

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概要

しろありNo.158

( 4 )4.2 床下土台含水率の推移 各試験区の土台含水率推移を図4に示す。換気孔を設置してから微生物数の測定を実施する1カ月前から測定を開始した。3月~6月まで換気区では密閉区より若干高く推移しているが,密閉区との差は5%程度であった。しかしながら,7月から急激に上昇し,50%程度まで到達した。その後,徐々に低下し10月下旬以降は,密閉区とほぼ同じ値を示した。木材の含水率は,相対湿度と平衡で推移するので,湿度が100%であっても,含水率はせいぜい28%あたりでとどまるはずである。したがって、7月~8月にかけての高含水率は液体の水,つまり雨水や結露水などが関与したものと考えるのが妥当である。この場合、結露が発生したことが,含水率測定箇所にカビ類が認められていたことから推測できたが,直接的な証拠は認められなかった。これに対し,密閉区では湿度が上昇する7月~8月にかけて若干上昇したが,それでも20%どまりで,耐朽性確保上からは有利な条件が維持されていたと考えることができる。ただし,この実験住宅では生活水が供給される状況ではないので,居住空間の水分条件が実際に供用中の室内と異なり,このことは当然床下の状況に反映するので,その点に留意する必要がある。4.3 採取された菌数の推移と菌種 図5に全落下菌数の推移を示す。本実験に用いたPDA にはカビ類と細菌類の繁殖を抑制するためにベンレートとテトラサイクリン塩酸塩をそれぞれ100 ppm 添加していたので,分離された菌数はこれらを添加しないPDA より少なくなる。このことについては,予備的な実験で確認している。したがって,以下で述べる結果についても同様なことになっているはずであり,分離されないことが無菌状態を意味しているのではない。4月~5月の全落下菌数は,外気でも少なく各試験区との差はなかった。6月には外気の菌数が大幅に増加したが,換気区では増加しなかった。ただし、7月以降には換気区での分離数が密閉区より大きくなった。これは,換気孔から外気が流入するとき同時に菌類も流入していることを示すものである。 図6に落下菌のうち,菌糸の色や菌叢の状態から,担子菌と推定された菌数計測の結果を示す。全採取期間を通じて,密閉区ではほとんど採取されなかった。8月~ 10月に外気と換気区での採取数が増加し,密閉区と比較すれば明らかなように換気区での採取数は外気でのそれを反映している。これも全菌数の場合と同様,換気孔からの菌の侵入を示す証拠といえる。 土台付着菌は全期間を通じて密閉区ではまったく採取されなかったが,換気区では7月,9月,11月に採取された。しかしながら,その数は,平均すると0.1 CFU/plate 以下であり,落下菌数に比べ極端に少なかった。この傾向は落下菌の傾向と同様である。 なお,本実験では,実験の前だけ各試験区の殺菌を実施したので,実験開始後の菌測定値は累積的な結果になっているはずである。それ故,付着菌の増加はほとんどなかったと判断できる。図4 土台含水率の推移図5 全落下菌数の推移図6 落下菌のうち担子菌と思われる菌数の推移