ブックタイトルしろありNo.160

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概要

しろありNo.160

Termi te Journal 2013.7 No.160 9唆された。一方, 職蟻から兵蟻あるいは職蟻型幼形生殖虫への分化は観察されなかった。ヤマトシロアリ近縁種のR. flavipesでは, ヘキサメリンを抑制すると職蟻の兵蟻への分化促進が観察され, ヘキサメリンには職蟻を職蟻の形態に留まらせる働きがあると報告されている19)。R. flavipesでは, 長鎖dsRNAを注入しているので, dsRNAの鎖長がシロアリの分化に影響する可能性がある。5.2  短鎖RNAと長鎖RNAのヘキサメリン遺伝子抑制効果の比較23) 長鎖dsRNAあるいは長鎖dsRNAの分解により生じる種々の鎖長(15-25 bp)のsiRNAの混合物が, 多くの昆虫でのRNA干渉研究で用いられている。長鎖dsRNAでは, 標的以外のmRNAに作用することで引き起こされるオフターゲット効果が心配されるため, 上述のヤマトシロアリのヘキサメリン遺伝子に特異的な単一のsiRNA(21 bp)を用いたRNA干渉実験を行ってきた。ここでは, シロアリにおける単一のsiRNAの有効性を評価するため, ヤマトシロアリのヘキサメリン遺伝子を標的とした3種類のsiRNA(21bp)と1種類の長鎖dsRNA(585 bp)を調製し, 職蟻とニンフに注入し, その効果を比較した。 3種類のsiRNA標的配列は, 上述の実験と同様にヤ表1  ヤマトシロアリ職蟻に対する短鎖RNAと長鎖RNA注入の影響表2 ヤマトシロアリニンフに対する短鎖RNAと長鎖RNA注入の影響マトシロアリのヘキサメリン配列(accession No.AB371986)を基に, siRNA Target Designer Programを用いて設計した。siRNA標的DNA配列は, Rssi 1(330- 348 nt)5’-gttcgagctcttctatttc-3’, Rssi 2(2107 - 2125nt)5’-gaaatgggttcagtatttc-3’, Rssi 3(2273 - 2291 nt)5’-gaagtaagcaccatgtttc-3’の各19 ntの3’末端にttを付加した21 ntからなる配列とした。なお, Rssi 3は上述の実験5.1で用いた配列と同一の配列である。これら3種類のsiRNAと1種類の長鎖dsRNA(585 bp, 635 - 1219 nt)を, in vitro Transcription T7 Kit for siRNA synthesisを用いて調製した。siRNAと長鎖dsRNAの各RNA水溶液(1.3 μg/μL)を, Nanoject II Auto-NanoliterInjectorを用いて, 3.0 ng(2.3 nL)ずつシロアリの胸部側面に注入した。コントロールとして, 職蟻あるいはニンフに同体積の超純水(2.3 nL)を同様に注入した。注入処理を施した職蟻30頭あるいはニンフ30頭を,湿らせたろ紙を敷いたシャーレ(直径90mm)で, 16日間飼育した。この際, ニンフの給餌のため, 注入処理をしたニンフ30頭と無処理の職蟻30頭を同じシャーレ内で飼育した。飼育期間中の死虫率と幼形生殖虫の出現状況を毎日観察した。また, RNAを注入した職蟻あるいはニンフを1, 2, 3, 5, 7日目に解剖し, トータルRNA抽出ならびにcDNA合成を行った。cDNAの定量siRNAordsRNAmRNA相対発現量*(日)1 2 3 5 7短鎖RNARssi 1 0.071 0.001 0.158 2.345 25.812Rssi 2 0.011 0.026 0.574 0.323 7.516Rssi 3 0.029 0.006 0 4.257 1.717長鎖RNARsds 0.022 0.006 0.203 2.266 1.963*水注入コントロールに対する相対発現量。siRNAordsRNAmRNA相対発現量*(日)1 2 3 5 7短鎖RNARssi 3 1.165 0.824 0.480 0.052 0.021長鎖RNARsds 0.040 0.232 0.071 0.047 41.278*水注入コントロールに対する相対発現量。