ブックタイトルしろありNo.160

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概要

しろありNo.160

Termi te Journal 2013.7 No.160 5と, 一個体あたりの重量が最も大きいネバダオオシロアリから最も多く水素が検出され, 一個体あたりの重量が最も小さいヤマトシロアリから検出される水素が最も少なかった。アメリカカンザイシロアリは, 一個体あたりの重量はネバダオオシロアリの次に大きいが, 水素濃度はイエシロアリに比べて明らかに少なかった。メタンについても, 水素濃度と同様にネバダオオシロアリから最も多く検出された。また, ヤマトシロアリからは, イエシロアリより高濃度のメタンが検出され, アメリカカンザイシロアリからはメタンは検出されなかった。土壌との接触がないアメリカカンザイシロアリは土壌中のメタン菌を体内に取り込む確率が低く, そのためにメタンが検出されなかったと考えられる。6. 強制換気におけるシロアリから発生する水素およびメタンの測定 密閉環境でのガス検出は, 定性・定量的な計測が可能となる一方, 酸欠によりシロアリの活性は3日程度で低下することが確認された。そこで, より自然な環境で長期的にガス計測を行うために, イエシロアリの職蟻200頭と兵蟻20頭を容器に封入し, エアポンプを用いて流量25ml/hで容器内を強制換気した。48時間ごとに餌のろ紙を与える(摂食時), 取り去る(非摂食時)操作を行い, 非摂食-摂食のサイクルを連続して3回(12日間)繰り返した。その際, 一定時間ごとにガスアナライザでガス濃度を測定した。図11は, 220図11  イエシロアリの摂食時, 非摂食時における水素濃度の時間変化メタン濃度 水素濃度温度,相対湿度,密閉日数日図 種のシロアリから発生する水素およびメタン濃度ろ紙ありろ紙なし水素濃度時間(温度,相対湿度)図 イエシロアリの摂食時,非摂食時における水素濃度の時間変化頭のイエシロアリの3グループについて, 12日間非摂食-摂食のサイクルを繰り返した時の水素濃度の変化を示す。イエシロアリについては換気することによって, ガスアナライザで検出するのに十分なメタンの濃度が得られなかった。水素については, ろ紙の投入後4時間程度で濃度が最大となり, 12日間シロアリの活性が低下することなく, 水素の測定が可能であった。 また, イエシロアリの摂食活動と水素発生の関係について検討するため, 強制換気下において, 水素の検出と摂食活動によって発生するAE検出を同時に行った。AEセンサを取り付けたオウシュウアカマツ(Pinussylvestris)試料片をイエシロアリの職蟻200頭と兵蟻20頭とともに容器に封入し, AEとガス計測を行った。その結果, 図12のように, AE事象率がピーク値を示してから数時間後に水素濃度がピーク値を示す傾向が見られ, これは摂食活動(木材をかじる行動)によるAE発生と, 腸内での木材消費から発生する水素の間に遅れが生じたためだと考えられる。 密閉環境下では容器内の温度を調整することは容易でも, 湿度を調整することは困難であったが, 強制換気によって, 一定の湿度に調整した空気を容器内に送り込むことによって, 容器内の湿度を調整することが可能となった。そこで, ガス濃度に及ぼす容器内の相対湿度の影響についても検討した。図13は, 各相対湿度において, シロアリを封入してから24時間後の水素濃度を示す。なお, 本実験では, 室内飼育と野外生息コロニーのイエシロアリ, および野外生息コロニーのヤ