ブックタイトルしろありNo.161

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概要

しろありNo.161

Termi te Journal 2014.1 No.161 7のくらいのスピードで修復をするのかを調査して, このような理解の基礎情報を得ようとしている。2013年3月に予備的な測定を行ったときには, 削り取った場所をほとんど修復しない塚や, 削り取った重量の数倍の土を補填した塚などがあって, シロアリの活動に大きな相違の存在することがわかった。今後このような違いがシロアリの種や塚の削り方, 塚の立地条件の違いとどのように関連しているのかについて追及したいと思っている。 持続的利用という観点に立つと, 東北タイの野菜栽培における現在のような大量消費が継続する場合, 利用可能な塚は短期間の内に消滅すると考えられる。一方カンボジアでの聞き取りでは十分な大きさになるまで待つ, という事例があり, 持続性を意識したものと考えられる。東北タイやラオスではこのような話を聞くことがなかったが, この点についてはさらに丁寧な調査が必要かもしれない。東北タイの水田では畦に成長しつつある塚を見るが, このような塚はよほど邪魔でない限り放置されている。木の生えていない塚は肥料に使えないという話もあるようなので, あるいはこのような措置が無意識にシロアリの生存と塚の継続,増殖を保障しているのかもしれないと思われる。さらにシロアリ社会の維持拡大のためには十分な食料が供給されねばならないので, 水田域では養うに足る産米林も必要となるだろう。シロアリ維持に最適な樹種があるのだろうか? 以上, シロアリの有用性についてそれを強調する立場で文章を進めてきたが, 東南アジアの農村にあっても当然家屋を食害するシロアリはいて, 屋敷や水田の出小屋が食われる被害はある。また東北タイではサトウキビを食害するシロアリもいるという。一般に塚を作るシロアリはこれらと別種であるとされるので, 私は安心して将来の東南アジア産米林農村での有望資源としてのシロアリを, 農村生活の持続性を支える柱の一つに推薦したいと考えている。引用文献1)P endleton, R.L.( 1943): Land use in northeasternThailand, Geogr. Rev, 33, 15-41.2) 高谷好一・友杉孝(1972):東北タイの丘陵上の水田:特にその「産米林」について, 東南アジア研究,10, 77-85.3) 小坂康之( 2007): 産米林,“ 図録メコンの世界?歴史と生態?.”秋道智彌編, 弘文堂, 東京, pp. 20-21.4) Grandstaff, S.W., T.B. Grandstaff, P. Rathakette,D.E. Thomas, J.K. Thomas(1986):Trees in paddyfields in Northeast Thailand. In“TraditionalAgriculture in Southeast Asia.”Ed. G.G. Marten,Westview Press, London, pp. 273-292.5) Kosaka, Y., S. Takeda, S. Prixar, S. Sithirajvongasa,K. Xaydala(2006): Land-use patterns and plantuse in Lao villages, Savannakhet Province, Laos,TROPICS, 15, 51-63.6) Miyagawa, S., M. Seko, M. Harada, S. Sivilay(2013):Yields from rice plants cultivated undertree canopies in rainfed paddy fields on the centralplain of Laos, Plant Prod. Sci, 16, 325-334.7) 小久保美佳・宮川修一・川窪伸光 (2008):ラオス天水田内に存在する樹木に棲息する小動物の種類の特徴, 第18回日本熱帯生態学会年次大会講演要旨集,20.8) 宮川修一・小久保美佳・原田真里・児山優作・足達慶尚・川窪伸光・大場伸也 (2010):ラオス天水田内の樹木に生息する動物のイネの生育への関与ならびに資源的意義, 熱帯農業研究3, 別2, 125-126.9) 小森麻弥・宮川修一・竹中千里・Sengdeaune Sivilay(2012): ラオス北部山地の焼畑耕地内におけるイネの収量変異と立地との関係, 熱帯農業研究5, 別2,83-84.10) 三浦憲蔵・スパサラムタドサク・タウインタングナクン・ヌチャンナリス・白石勝恵(1990):東北タイにおけるシロアリ活動の土壌に及ぼす影響, 熱帯農業, 34, 40-47.11) 宮川修一・小畑尚子・土田浩治・舟橋和夫・齋藤暖生・竹中千里 (2012):東北タイの農村におけるシロアリ塚の利用, 熱帯農業研究5, 別1, 85-86.12) Pendleton, R.L. (1942): Importance of termitesin modifying certain Thailand soils, J. Am. Soc.Agron., 34, 340-344.13) Miyagawa, S., Y. Koyama, M. Kokubo, Y. Matsushita,Y. Adachi, S. Sivilay, N. Kawakubo, S. Oba(2011):Indigenous utilization of termitemounds and their sustainability in a rice growingvillage of the central plain of Laos, J. Ethnobiol.Ethnomedicine, 7,(24)1-6.