ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

Termi te Journal 2014.7 No.162 7 表1の低密度ポリエチレン, ビニルは汎用的なケーブルの被覆材料として, 高密度ポリエチレンは, 通信ケーブルの絶縁材料として広く使用されている。 表1から分かるように, 高密度ポリエチレンは, ナイロン12の次に硬度が大きく, 良好な防蟻性能が期待できる材料である。 高密度ポリエチレンはケーブル以外にも生活用品その他で使用されている比較的, 汎用的な材料であり,価格面・製造面において良好といえる。 また, 材料表面の滑り性及び平滑性を向上させることで防蟻性能が良好になることが期待できる2)。よって, 高密度ポリエチレンの樹脂の中に滑り性をよくする滑剤などを添加した新防蟻材料を開発した。現行品であるナイロン12と今回開発した新防蟻材料の硬度と摩擦係数を表2に示す。 この結果, 新防蟻材料の硬度はナイロン12より若干低いが, 摩擦係数はナイロン12と比較して4割減らすことができた。ケーブルの延線張力の低減に繋がり,布設作業性の改善が期待できる。また, 新防蟻材料の材料表面に滑り性, かつ平滑があるためシロアリの食害にも有効であると考えられる。 つぎに, 実際の防蟻効果を調査するため, 各種被覆材料のシートサンプルを用いて短期(21日)間, 長期(4ヶ月)間におけるシロアリの食害による防蟻性能の評価試験を行った。3. 材料の防蟻性能3.1 短期(21日)間評価 この試験は, 株式会社今村化学工業白蟻研究所殿の協力を得てJIS K 1571(2010)「木材保存剤-性能基準及びその試験方法 附属書A(規定)限定用途のための防腐性能試験及び防ぎ(蟻)性能試験」に準じて行った。・試験試料 試験試料は, 現行品(ナイロン12), 開発品(新防蟻材料), 比較用試料(スギ材)とし, 現行品, 開発品は(20mm×20mm×2mm)の正方形板を各5個,比較用試料は(10mm×10mm×20mm)の直方体を5個用意した。・評価方法 防蟻性の評価は, 直径80mm×高さ60mmのアクリル製円筒の底に硬質石膏を5mmの深さに流し込んで塞ぎ, 石膏の上に高さ1mm, 長さ30mmのアクリル三角柱を3本置いて試験試料を1個載せた(写真2)(写真3)ものを, 底に湿った脱脂綿を置いた蓋付きプラスチック容器内に5個並べて(写真4), 各円筒内にイエシロアリ(職蟻150頭, 兵蟻15頭)を放し,28±1℃の暗所に21日間(2012年8月20日?9月10日)放置して, 試験前後の試料の質量を測定して食害による質量減少率を求めた。 秤量に先立ち, 表面に付いた蟻糞を水洗いして取り除き室温で1日間風乾したあと, 60℃2日間の加熱乾燥処理を行った。・調査項目・質量減少率  :( 供試前試験体質量―供試後試験体質量)/供試前試験体質量×100・供試虫の死亡率:供試後職蟻死亡数/供試職蟻数・食害痕    :写真観察 なお, 質量減少率が小さいほど, 防蟻性に優れることを示す。供試虫の死亡率は試験が正常に行われたことを示すデータである。 試験体の質量減少率及び供試虫の死亡率の結果を表3に示す。試験前, 試験後の食害痕の状況について各々表4, 表5に示す。表2 ナイロン12と新防蟻材料の硬度及び摩擦係数試 験 項 目従 来 品開 発 品試 験 方 法ナイロン12 新防蟻材料硬  度ショアD 70 65 JIS K 7215摩擦係数μs 0.47 0.29 ASTM D1894