ブックタイトルしろありNo.162

ページ
44/62

このページは しろありNo.162 の電子ブックに掲載されている44ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

しろありNo.162

Termi te Journal 2014.7 No.162 41ニーは, そのエリアでの高い競合や外敵による捕食により殆ど生存できない27), 43), 44)。創成期コロニーが存続できたとしても, 孵化した内の50%の幼虫や職蟻が7ヶ月以内に死亡する(King and Spink26), Higa 28);本研究)。この期間では, 0?2頭程度のW 2がW 3(触角節数13)となり, S 1は初年度は生き残れない28)。この結果から, 初生卵から孵化した個体の大部分の寿命は短いと推定され, 最初のW 2?W3は, 次の卵(第二次産卵期)の世話をするまで生存すれば十分なのかもしれない。創成期コロニーの定義の特徴は, L 2から分化した小型兵蟻S 1の存在である。さらに, 創成期コロニーは, 全ての個体の寿命が短いので大部分がW 2に留まり, W 3は極少数である。創成期の間は, 全ての個体は楕円形の部屋に留まる。未熟期コロニー, 8?26 ヶ月 ここに記載した未熟期コロニーでの分化は, Kingand Spink26)及びHiga28)の結果を再検証したものである。第二次産卵期はコロニー創設約8ヶ月後に始まり,6?8ヶ月続き, 50 ?150卵が産下される。創成期コロニーとは異なり, 幼虫は最初のW 1とW 2(もし居ればW 3も)が世話をする。全てのL 2はW 1となり, L 2→PS 1→S 1の分化経路は無い。新たな兵蟻は, W 1→PS 2→S 2の経路で分化する。S 2の触角節数は13で,生存虫数にもよるが5?25頭程度が分化し, S 1は漸次死亡して兵蟻割合は15%程度に維持される。第二次産卵からのW 3数は増加するが, 引き続き死虫率は高く10 ?60%は設立後18 ヶ月まで生存できず, 最も順調なコロニーでも総計200頭強程度で, 最も不調なコロニーでは30頭以下である26), 28)。何頭かのW 3は, 楕円形の部屋を拡張し始める。 コロニー創設18 ヶ月後頃から6?8ヶ月続く第3次産卵期が始まり, 400 ?4,000卵が産下される。産卵数の幅が広いのは, 観察方法の違いや, それまでの産卵期からの生存虫数の差異による。兵蟻への分化経路は主としてW 1→PS 2→S 2であるが, W 2→PS 3→S 3(触角節数14)の経路の個体も出現する。22 ?26 ヶ月頃には, 産卵は休止し, 順調なコロニーでは4,000頭に達するが, あまり順調でないコロニーは300頭以下である26), 28)。職蟻は成長し多くの個体がW 3となり, 全体の20 ?30%に達する。この時期には, まだW 4は見当たらなかった28)。兵蟻階級は全体の10 ?15%である。採餌活動は増加し, 年長の職蟻が担当する。若齢期コロニー, 約2?5年 ここに記載した若齢期コロニーでの分化は, Higa28)の結果を再検証したものである。26 ヶ月経過後, 第4次産卵期が始まり, 前回の産卵から生じたW 3の中からW 4に脱皮する個体も出現する。兵蟻への分化は主としてW 2→PS 3→S 3の経路を取る。本産卵期では,6,000卵程度までが産下される。36 ヶ月時点で, W 4は全体の10% , W 3は全体の40%に達する。 コロニー年齢が5年に近づくにつれ産卵期間は次第に長くなり, したがって休止期は不明瞭となった。女王の膨張した腹部は, 創成期では機能している卵巣管は12(女王の体重・12mg)であったが, 若齢期コロニーの終期では185(女王の体重・90mg)に発達した。コロニーが成熟する過程で, 6,000卵と15,000頭に増加しうる。Higa28)は, この時点ではニンフは見当たらず,大部分が若齢の個体であると報告している。この観察結果から, 寿命はまだ比較的短く, W 5(触角節数15)になる個体はほとんどいないと推定される。この時点での兵蟻の大部分はW 2→PS 3→S 3の経路で分化するが, W 3→PS 4→S 4(触角節数15)の経路で分化する兵蟻も多少存在する。成熟期コロニー, 5年以上 イエシロアリの5年以上経過したコロニーに関する正確な研究報告は無い。しかし, 成熟期コロニーは採餌テリトリーを広げ45), 個体数が100万頭以上に達するものもある46) との野外観察報告があり, 成熟期に到達したことが示唆され, 個体数は最大限(資源量, 女王の産卵能力, 採餌場の大きさにより制限されると推定)まで急激に増加する47)。野外の成熟期コロニーの女王は一つの卵巣に500以上の卵巣管を保持しており(合計卵巣管数1,000), 体重300mgになる場合もある28)。成熟期コロニーでは, 個々の寿命は長くなり, 職蟻はW 6にまで成長し, W 7(触角節数17)に達する個体も出現する23)。我々は, イエシロアリでW 7以上の齢期が存在するとの文献記載を見つけることはできなかったし, 野外観察と実験室飼育巣の観察(本研究)からもW 6以上の個体は観察できなかった(Shimizu23)が述べているようにW 7は殆ど稀)。Shimizu23)により,成熟期コロニーの採餌グループは平均で32 %のW 3,44 %のW 4, 18 %のW 5, 5%のW 6, 1 %のW 7であることが, 採餌場所の職蟻の分析で判明した。若齢職蟻(W 1とW 2)が採餌場所には居ないことは, 兄弟姉妹(卵と幼虫)の近くに留まっている可能性があること