ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

44 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 4 . 7 N o . 1 6 2ニンフ生産 全てのCoptoremes属の研究において24), 29), 30), 31),33), 48), 53), 2齢幼虫から1齢ニンフが分化する(L 1→L 2→N 1)としており, C. lacteusとC. gestroiでは(他の種類については未記載)成虫となるまでのニンフステージは6齢ある(N 1→…→N 6→A)としている。それに対し, Raina et al.35)は, 1齢ニンフは1齢職蟻から分化する(W 1→N 1)としている。Raina et al.35)は, 野外のトラップから採集したシロアリを調べているが, Shimizu23) が述べるように採餌場所ではL 2やW 1は含まれない群を採集している可能性がある。しかし,Raina et al.35)らが用いた野外トラップのいくつかが生殖虫の生活域近くに設置されていた場合, W 1を採集しているかもしれない。すなわちRaina et al.35) の提唱は, 全てのニンフが人為的に取り除かれている野外の成熟したコロニーから採集された群から, ニンフが新たに生産された結果に基づくものである。Rainaet al.34) は, イエシロアリはストレスがかかった際(全てのニンフや生殖虫の除去, 孤立), 供試したシロアリ群に幼虫は含まれておらずとも, 若齢職蟻からニンフを生産する柔軟性のレベルを保持しているとしている。幼虫が含まれていないことは, L 2からN 1が発生するという見解除く点で重要である。さらに, 再びニンフが生産されたことから, 少数の若齢職蟻がニンフ分化経路へ切り替わる能力を保持していることを示している。野外トラップから採集した平均8.2 % (最大20 %まで)の個体がニンフであるにもかかわらず, ベストケースで0.58 %の職蟻しか新たにニンフに分化しない35)。この結果は, 職蟻からの新たなニンフ生産は,成熟期コロニーのニンフ生産の主要経路ではないことを強く示唆している。さらに, イエシロアリの人目につきにくい行動の故に幼虫についての観察が不足してはいるが, Coptotermes属についての他の研究で述べられているように, 消去法でニンフ生産の唯一の現実的な主要経路はL 2→N 1である。我々の意見をサポートする報告として, Raina54) は, 創設生殖虫がいない(よって若齢虫がいない)6年経過コロニーではニンフを生産しないことを示しており, これはニンフを生産するには幼虫が必要であることを示している。最後に, Raina et al.35) は, イエシロアリではニンフは7齢あるとしているが, この報告にはデータが記載されていない。Raina et al.35) は, 新たに生産されたN 1, N 2,N3の触角節数は, それぞれ12, 13, 14であると考えている。しかし, 大きさを見ると, 全て同じ齢であるように思われる。Roisin and Lenz30)はC. lacteusではニンフの触角には不明瞭な部分があるので, 節数で規定することは正確でないと述べている。それ故, Roisin andLenz30) はC. lacteusではN 1は10 ?12節, N 2は13 ?14節などとしている。従って, Raina et al.35) は, 触角の不明瞭な部分及び新たに生産されたニンフの解釈により,イエシロアリのニンフの齢数を多く判定した可能性がある。従って, 他のCoptotermes属と同様にL 2→N 1→N 2→N 3→N 4→N 5→N 6がイエシロアリの標準的なニンフ分化経路であり, 有翅虫はN 6から発生する。二次生殖虫 イエシロアリの成熟期コロニーは二次生殖虫(ネオテニック)を生産する能力がある。多数の二次生殖虫を生産できるReticulitermes flavipes (Kollar)のコロニー10), 17) と比べ, Coptotermes属ではその数が少なく55), 56), ニンフから分化し33), 35), 観察されたネオテニックは全て短翅であった57)。イエシロアリは職蟻型幼形生殖虫(エルガトイド)を産出できるとした報告56)は,検証できなかった。Vargo et al.57) は, 30個の野外イエシロアリ巣内の遺伝子を調べ, 3コロニーのみが二次生殖虫を保持し, イエシロアリではReticulitermes属とは異なり二次生殖虫は一般的ではないとした。さらにVargo et al.57) は, これら二次生殖虫はコロニーが一次生殖虫の一方を失うか, あるいは大きな群(ニンフが存在)が本巣から切り離された場合(例えばGrasse58)が規定するsociotomy(コロニーの分断))にのみ, 産出することを示唆した。C. lacteusでは, 生殖虫の欠如は,短翅型のネオテニック出現に繋がるとした59), 60), 61)。Costa-Leonardo et al.33) はC. gestroiでも同様, 生殖虫が欠如したコロニーにおいて幼虫がいる場合にのみネオテニックが産出されるとした (L 2→N 1→…→SR)。Lenz and Runko61) 及びCosta-Leonardo et al.33)も, 何種かのCoptotermesの成熟期コロニーでは, 一次生殖虫が生存している場合も稼働していないネオテニックが存在するとしている。このことは, 一次生殖虫が突然死亡した場合, “待機”しているネオテニックに速やかに生殖活動を移すことにより, コロニーを存続させる戦略であると考えられる。イエシロアリでも稼働していないネオテニックの存在は可能であるが, まだ報告されていない。最後に, Reticulitermes属では, エルガトイドと短翅のネオテニックの稼働している二次生殖虫を生産する能力及び分散型の巣構造により, コロニーの分断が普通に起こる58)。イエシロアリにおいて