ブックタイトルagreeable 第12号(平成21年10月号)

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概要

agreeable 第12号(平成21年10月号)

オピニオン1 Agreeable 2009/10平成21年4月24日、米国及びメキシコで豚インフルエンザウイルス(H1N1亜型)がヒトに感染を起こして多数の患者と死者が出ていると、世界保健機構(WHO)から発表されました。新型インフルエンザという表現ではなかったのですが、これが新型インフルエンザの世界的な流行(パンデミック)の始まりだったのです。1918年に出現したスペイン風邪型インフルエンザは半年かかって世界に蔓延しました。交通網の発達した今日では、一か月もかからずにヨーロッパ及びアジアまでウイルスは広く拡散しました。WHOは、それまで長らく「3」であった新型インフルエンザ警戒度を4月27日には「4」に引き上げました。同月29日には早々と「5」に引き上げ、6月11日には、最も高い警戒度の「6」、すなわち世界的大流行(典型的なパンデミック)の発生に設定したのはご存知の通りです。○今回出現したのは本当に新型インフルエンザウイルス?今回新たに出現したインフルエンザウイルスを、日本では新型インフルエンザウイルスと名付けましたが、「新型インフルエンザウイルス」という呼称が正しいのか、判断し難いのが実情で、国外では「新型」とは表現されていません。これまでの「新型インフルエンザウイルス」の定義では、現在地球上に暮らす大部分のヒトが感染した経験のないHA亜型のインフルエンザウイルスが出現して、ヒトからヒトへ容易に感染を繰り返すことができた場合、これを新型インフルエンザウイルスとするものでした。今回のウイルスのHAは、ごく初期のスペイン風邪型ウイルスに類似しています。したがって、新型ではなく、再興型ウイルスの方が正しい表現かもしれません。○日本では別の新型インフルエンザ出現が想定されていたが?厚生労働省は、鳥類に対して強毒のH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスが、変異を起こして新型インフルエンザの原因ウイルスになると想定した、H5N1ウイルス対策に限定した行動計画を策定していました。H5N1ウイルスが、ヒトに対しても鳥類同様激烈な病原性を示すことを前提とされていました。ワクチンもヒトから分離されたH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを抗原としたものだけが製造され、プレパンデミックワクチンとして備蓄されています。ところが、出現した新型インフルエンザウイルスは、ブタ由来のH1N1亜型インフルエンザウイルスで、健康な人にウイルスが感染し発病した場合、重症化する事例は、現在まで少なくとも日本国内では少数です。死者も4名に止まっています。原因ウイルスはアマンタジンには耐性を示すが、オセルタミビル(タミフル)には感受性を示します。早期に投薬すれば、短期間で快癒します。大阪府ではタミフル耐性のウイルスが検出されましたが、その後出ていません。○現在の新型インフルエンザ発生状況は?全都道府県で新型インフルエンザ患者が発生しています。現在でも患者は増え続け、流行期に入ったと考えられています。発生当初はアメリカ、オーストラリアあるいはフィリピン、タイなどの多発国から入国あるいは帰国者及びその家族が主な患者でした。入国後間もなく発病した人の多くが、医療機関で早期に受診したことから、ヒトからヒトへの感染は顕著ではありませんでした。一方、海外へ行った経験のない人たちへの感染も国内で起きています。そのような人の間でのインフルエンザの流行速度は非常に速いのが特徴です。しかも、高校生、大学生という若い世代での流行が主体です。ウイルス感染は、家庭内より団体生活を送る場で、より頻繁に起きているようです。平成21年7月以来国内での新型インフルエンザ患者数が急増しており、今後が大変心配されます。○豚インフルエンザウイルスとは?インフルエンザウイルスの宿主域と感染環を図1に示しました。インフルエンザウイルスは鳥類のみならずほ乳類にも感染できる、宿主域の広いウイルスです。カモ等の水鳥が長い間保有している鳥インフルエンザウイルスが、すべてのインフルエンザウイルスの祖先です。渡りを行うカモ類がインフルエンザウイルスの本来の宿主です。ブタもインフルエンザウイルスに感染します。ブタは鳥インフルエンザウイルスにもヒトのインフルエンザウイルスにも感染できるレセプターを鼻粘膜上皮に備えています。ブタがインフルエンザウイルスに感染しても顕著な臨床症状を示すことは希です。豚インフルエンザウイルスには、ヒトから感染したウイルスと鳥から感染したウイルスがあります。通常の豚インフルエンザウイルスは、ブタに対する感染力は強いのですが、顕著な病原性を示しません。また、ヒトへの感染力を持つものの、病原性は強くありません。○新型インフルエンザウイルスの正体は?基本的には豚インフルエンザウイルスですが、豚ウイルスの遺伝子の他、ヒトのホンコン風邪型ウイルス及び鳥インフルエンザウイルスの遺伝子も入っていま新型インフルエンザの話京都産業大学鳥インフルエンザ研究センター・鳥取大学農学部附属鳥由来人獣共通感染症疫学研究センター大槻公一H3N8H10N7H1N3H13N2H13N9H7N7H4N5H4N6H5N1 H3N3H1N1H1N2H3N2H1N1H3N2H1N1H2N2H3N2????????????????????????????????????????????????????????????????????????H5N1図1