ブックタイトルagreeable 第12号(平成21年10月号)

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概要

agreeable 第12号(平成21年10月号)

Agreeable 2009/10 2す(図2)。HA遺伝子は米国のブタから分離された古典的なスペイン風邪型ウイルス、NA遺伝子はヨーロッパ・アジアで分離された鳥由来の豚ウイルスから構成される、遺伝子再集合体です。ヒトへの強い感染力と、通常の豚ウイルスとは異なり明らかな病原性を持つのが特徴です。米国ではすでに500名以上の死者が出ています。20世紀に出現した3種類の新型インフルエンザウイルスは、すべてブタの体内で作られたことは分かっています。今回の新型インフルエンザウイルス出現には、鳥インフルエンザウイルスは重要な役割を果たしていません。○新型インフルエンザに対する一般的な現状認識は?今回の新型インフルエンザウイルスの亜型は、スペイン風邪型ウイルス、ソ連型ウイルスと同じH1N1です。1956年以前に生まれた人達の多くは、H1N1ウイルス感染を経験しており、さらに、インフルエンザワクチン接種を受けた多くの人たちは、このウイルスに対する血中抗体を保有していることが考えられます。しかし、今回のウイルスはこれまでの豚インフルエンザウイルスと異なり、ヒトへ明らかな病原性を示しながら、ヒトからヒトへの感染を繰り返し、しかも地球規模での広がりをみせていることから、新型インフルエンザウイルスと称する資格があるのかもしれません。新型インフルエンザウイルスのヒトへの病原性は、あまり強くないと、現在でも考えられているようです。国内で重症化するケースはあまり多くはありません。そのため、通常のインフルエンザの場合と同程度の被害をもたらし、社会機能を麻痺させるような大きな問題を引き起こすほど激烈な疾病ではないと楽観視する傾向も抜けきれていません。○本当はどうなのか?通常の季節性のインフルエンザウイルスの姿が消えてしまっている、インフルエンザのオフシーズンである夏にも、新型インフルエンザ患者は増え続けています。はたして新型インフルエンザウイルスのヒトへの病原性は軽微でしょうか?呼吸器病発生の少ない夏にも、強い感染力を示し、明らかな臨床症状を発現させているこの新型インフルエンザウイルスの病原性は決して低くはありません。ウイルスが変異を起こさなくても、ヒトのインフルエンザウイルスに対する感受性が高まる冬期には、ヒトに対して夏よりもはるかに強い病原性を示すことが心配されます。重症化する患者も増えるでしょうし、感染爆発が起きて、正常な社会活ができなくなる事態の発生することも懸念されます。○効果的な防疫対策は?最も重要なことは、この夏に国民一人一人が、うがい、手洗いを励行すること、不幸にしてウイルスに感染してしまったら、医療機関で早期に受診すること、他人へ感染をさせない行動をとることが何よりも重要です。夏の間に新型インフルエンザウイルスの封じ込めに成功するか否かが、新型インフルエンザの今後の動向を占う鍵になると思われます。冬期を迎えている南半球、特にアルゼンチン、チリで新型インフルエンザは猛威を振るっています。中国、東南アジア、ラテンアメリカ、アフリカにこのウイルスが広く拡散して、感染者が激増して死者の多く出ることが心配されます。中国あるいはインドネシアで飼育されているブタが、高率にH5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスに感染していることはすでに分かっています。新型インフルエンザウイルスは、ブタ由来のウイルスですから、ブタへの強い感染力は保持されています。中国あるいは東南アジアの農村地帯で飼育されているブタの体内で、H5N1亜型かそれ以外の亜型の鳥インフルエンザウイルスと今回の新型インフルエンザウイルスによる新たな遺伝子再集合体が作られ、別の「新型インフルエンザウイルス」がブタの体内で出現してしまうことも心配されます。したがって、これら諸国での流行を防ぐことは非常に重要になります。参考文献:Neumann G. et al. Nature 459:931, 2009図2