ブックタイトルagreeable 第13号(平成22年1月号)

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概要

agreeable 第13号(平成22年1月号)

オピニオン1 Agreeable 2010/12000年4月から成年後見制度がはじまっているのをご存じですか。成年後見制度は、判断能力の不十分な人を支援し保護するための制度です。成年後見制度には三つの類型があります。後見、保佐、補助です。いずれも、「精神上の障害により」事理弁識能力が低下した場合が対象であり、単なる浪費壁だけでは対象となりません。事理弁識能力の低下の度合いに応じて、次のとおり区分されています。●後見とは、「事理弁識能力を欠く常況にある者」について行われます。●保佐とは、「事理弁識能力が著しく不十分である者」について行われます。●補助とは、「事理弁識能力が不十分である者」について行われます。いずれも、裁判所の決定により、後見には成年後見人が、保佐には保佐人が、補助には補助人が選任されます。後見される側、保佐される側、補助される側の人をそれぞれ成年被後見人、被保佐人、被補助人といいます。皆さまのようなシロアリ防除業者にとって、契約をするにあたり、気をつけなければならないことは次のとおりです。後見の場合には、後見人が包括的な代理権を持っています。仮に、被後見人との間で契約を結ぶと、「日常生活を除く全ての法律行為」として、すでに締結した契約が取り消されることがあります。シロアリ防除の契約も取り消しの対象になる可能性があると思われます。保佐の場合には、保佐人は特定の法律行為について代理権を持っています。家庭裁判所が保佐人に代理権を付与する審判をすることになっています。仮に、保佐人の同意を得ないで、被保佐人との間で契約を結ぶと「民法13条1項所定の重要な財産行為」として、すでに締結した契約が取り消されることがあります。シロアリ防除の契約も取り消しの対象になる場合があると思われます。民法13条1項には「元本の領収又は利用」「借財又は保証」「不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為」「訴訟行為」「贈与、和解又は仲裁合意」「相続の承認若しくは放棄又は遺産分割」「贈与の申込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込みの承諾又は負担付遺贈の承認」「新築、改築、増築又は大修繕」「民法602条に定める期間を超える賃貸借」が列挙されています。補助の場合には、補助人は特定の法律行為について代理権を持っています。家庭裁判所が補助人に代理権を付与する審判をすることになっています。仮に、補助人の同意を得ないで、被補助人との間で契約を結ぶと「家庭裁判所の審判により定められた民法13条1項所定の行為の一部」が取り消されることがあります。シロアリ防除の契約も取り消しの対象になる場合があると思われます。民法13条1項は前述のとおりです。したがって、高齢者などの単身家庭を訪問してシロアリ防除の契約を勧める場合には、あとで紛争にならないように注意する必要があります。後見、保佐、補助の決定を受けている可能性があるからです。後見、保佐、補助の決定を受けていないかを慎重に見極める必要があります。現実的には、高齢者本人に聞いたから充分というわけではありません。シロアリ防除業者としては、すぐに契約締結を求めるのではなく、例えば、同居の息子や娘を立ち会わせて契約をする、近所に住む息子や娘に来てもらって説明のうえ、契約に立ち会ってもらう、近所に息子や娘がいないときには親戚や民生委員に立ち会ってもらうなどの配慮が必要です。その話の中で上記の3類型のいずれかの決定を受けていることが判明したら、ただちに、成年後見人、保佐人、補助人と連絡をとるべきであり、これらの了解(法律的に言えば、代理または同意)がなければ契約してはなりません。あとで契約を取り消されれば代金の支払いを受けることができなくなるおそれがあるからです。今後、これらの成年後見の制度がもっともっと広まることが予想されています。判断能力の不十分な人との契約には、以上のような法律問題があることを知っていてほしいと思います。契約に関する法的注意事項について―成年後見制度(後見、保佐、補助)―弁護士 西 修一郎