ブックタイトルagreeable 第14号(平成22年4月号)

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概要

agreeable 第14号(平成22年4月号)

オピニオン1 Agreeable 2010/4昨年秋に消費者庁がスタートし、消費者問題への国民の関心がかつてなく高まっています。『消費者契約法』に続き、『消費者安全法』が作られ、また『特定商取引法』の大きな改正も行なわれました。こうしたなか、悪質商法による高齢者の被害は、減るどころか増え続けています。わが国では5人に1人、約2500万人が65歳以上の高齢者です。そして、そのうち1000万人以上の方がお1人もしくは高齢者同士でお住まいになっています。消費者相談窓口には、毎日高齢者を狙った消費者トラブルの相談が数多く寄せられています。その数は年々増加し、高額な被害の相談も相次いでいます。こんな相談がありました。事例11人暮らしで74歳の母の家に、「お宅の近くで配水管の工事をやっているのですが、ついでですから無料点検をいたしましょうか」とやって来た。母は孫のような感じのいい青年なので、点検してもらったところ、「1箇所に水漏れがあり、床下が水びたしで土台にカビが発生していて、このままでは家の土台が腐ってしまう」と聞かされ、大変驚いた。「すぐに水を除いて調湿剤をまき、床下換気扇をつけなければならない」と言われた。つれあいを亡くしてから10年以上も床下のことなど考えた事がなかった母は、家の土台のことが心配になり、すぐその場で契約し、その日のうちに工事が行なわれた。渡された書類をよく見たら75万円だった。手許にこんな高額な現金がなかったので支払いは3日後にしてもらったという。本当に必要な工事だったのだろうか。最初の相談電話は、娘さんから入りました。その後ご本人に話を伺い、その家を建てた大工さんに床下や家の状況を調べてもらう事になりました。その結果、家全体は老朽化してきていますが、水漏れはなく、床下の水浸しや土台が腐る心配はないとのことでした。契約書面には、床下工事一式という漠然とした書き方で、契約内容がわからないものでした。またクーリングオフの記載は、黒字で、法律で決められている大きさより小さい文字で書かれていました。この相談の問題点は、①勧誘を行なう際に、事実と違うことを告げている ②勧誘に先立って、商品や役務について明示し説明していない ③消費者の情報力不足に乗じた販売を行なっている ④契約を結ぶ際、クーリングオフについて口頭での説明をせず、またクーリングオフに関する重要な記載事項が欠けており、法定の契約書面を交付していない、 などがあげられます。事例2自宅を建てた工務店から連絡があり、5年経ったので点検をし、シロアリ駆除もした方がいいと言われた。専門業者が来て、作業をしていった。作業中にも臭いが気になっていたが、その次の日から何だか気分が悪くて、目が痛い。シロアリ駆除の薬剤のせいではないか。どんな薬剤を使ったのだろうか。近頃はアレルギーの人が増えて、化学物質に対して敏感な反応が現れることがあります。原因が薬剤なのか否かは受診しなければはっきりしませんが、消費者の困っている状況と不安な気持ちは十分に理解できるものです。メーカー名や薬剤名やその成分などを速やかに教えてもらえると、消費者は受診の際に医師に説明できて、より良い治療に繋がると思われます。シロアリ駆除の専門家である事業者さんからの適切な情報提供が重要になります。概して高齢者は、住宅関連の工事内容などの知識や情報が乏しいために、悪質業者の思うままの高額な契約をしてしまうことが起ります。また、1人暮らしの高齢者の中には、不当な工事だと感じても、業者に対して不安や恐れから早く帰って欲しいために契約書にサインしてしまう人もいます。他に、そもそも高齢者ご本人に被害を受けたという認識がなかったり乏しい場合もまま見られます。それ以外にも、だまされたことや被害を受けたことを家族に隠したい意識があり、救済を積極的に求めない、諦めてしまうというケースもあります。高齢者は未成年と異なり、年齢で一括りに判断できない難しさがあります。70歳代は最もばらつきがあり、特に難しいと思われます。かくしゃくとしている方がいる一方で、介護支援を受けている人や、ご自身の状況がまだらにわからなくなる方など、実にさまざまです。悪質事業者の行為は論外ですが、広く一般的に契約締結にあたってのお願いとしましては、消費者の知識や状況に応じた丁寧な説明を心掛けていただきたいということです。消費者は往々にして説明の一部分しか記憶に残っていないことがあります。聞いた聞かないという後日のトラブルを避けるためには、契約内容がはっきりわかるような細かい内訳などが記された書面を渡してくださるとよいと思います。また、70歳代や80歳代の方と契約をする場合は、ご本人だけでなく、ご家族や娘さん息子さんなどの立会いのうえで契約を結ぶことが今後ますます大切になってくると思われます。顧客の経験知識や財産状況に照らして、それに適合する勧誘を行なうことが関係法令にも明確に規定されています。私たち誰もがいずれは高齢者となるわけですから、高齢になり判断能力が下がっていったとしても安心して暮らせる社会になるようにと、『適合性の原則』が一層重要視されてくると思います。高齢者の 消費者トラブルを防ぐために消費生活専門相談員 黒川正美