ブックタイトルagreeable 第15号(平成22年7月号)

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概要

agreeable 第15号(平成22年7月号)

Agreeable 2010/7 14シロアリ防除業のルーツは明治末期で、鹿児島県では今村白蟻と帝国白蟻の2社が営業を始めたとされています。昨年見つかった当時の工事写真(故田中善蔵氏所有)を紹介します。写真には沖縄の会社名と工事内容が記載されています。写真文面から亜砒酸ガス注入法によるイエシロアリ駆除と判明しました。それらについても紹介します。鹿児島県南九州市川辺町平山地区は、小さな集落にも関わらず、シロアリ防除業者が4社営業していました。創業は大正時代と言われていましたが、確かではありません。昨年、有限会社白アリの田中 田中義治氏より、父 故田中善蔵氏所有の写真が見つかったとの連絡を受けました。その写真1には、豊国工業社鹿児島総本部那覇支部事務所の看板があります。これらの写真から、川辺地区業者のルーツは沖縄県の豊国工業社鹿児島総本部那覇支部事務所で大正時代には開業していたことが判りました。写真1に記載されている文章を紹介します。『大正13年5月6日付 琉球炭鉱那覇事務所建物に全滅的惨害を興し得し家白蟻を全部誘集中毒死せしめたし畳八升。誘集用、施工、作業時間6時30分間。豊国工業社駆蟻工事請負は白蟻特有の性質を最も巧妙に利用せる化学応用白蟻防除方法にして世界の学会に誇るに足るべき合理的の物なり。標準効果勿驚30年 工務技師 ??? 豊国工業社鹿児島総本部 那覇支部事務所』この工事では、6時間半でイエシロアリを誘導、駆除したと記載されています。当時の駆除薬剤は亜砒酸であり、伝播性を利用し、粉剤、液剤で使用され、営巣壊滅には2日程度要しました。写真の6時間半は、余りにも短い。イエシロアリの短時間駆除方法はどのような方法なのか、調べることにしました。帝国大学を出た、土木技師大島正満が明治43年、台湾総督府土木部第2回白蟻調査報告書をまとめています。その報告書53頁に亜砒酸ガス注入法が紹介されています。猛毒の亜砒酸ガスを注入する駆除方法であれば、短時間駆除が可能であると推測されます。報告書に記載された亜砒酸ガス注入法を紹介します。『二硫化炭素…蟻道を見つけた場合はそこより二硫化炭素液体を流し込み…密閉する、更に優れて有効な方法は亜砒酸ガス注入法で、それには白蟻駆除器と称する特別な機械を用いる。この目的のために製造された特許薬はないことはないが、南アフリカではそれに較べ低価格で効力も変わらない新薬を使用している、その調合法は、次の如し…白色砒素、硫黄…』台湾総督府白蟻調査報告書に記載された、亜砒酸ガス注入器を図1に示します。注入器は、燃焼炉及び空気ポンプで構成されており、炉中に木炭を赤熱させた後、ガスを発生させる薬剤を投入し、炉を密閉し、取り付けられた空気ポンプを使用すると、発生したガス体は弾力性パイプを通して放出されます。協会30年誌125頁には、明治時代の自動車として帝国白蟻の写真が掲載されています。その写真を詳しく見ると、人物の横に小さな燃焼炉、車の横に空気ポンプが写っています。この写真から、帝国白蟻は、亜砒酸ガス注入器を所有し、駆除に使用していたことが伺われます。田中善蔵氏、帝国白蟻の写真から、明治、大正の業者は、亜砒酸ガス注入器を所有し、ガス注入法を行っていたことが判りました。亜砒酸の利用方法として、粉体の伝播性だけでなく、亜砒酸ガスによる中毒死も利用していました。田中善蔵氏が所有していた1枚の写真から、当時の工事方法が判明しました。これからも、古い記録を収集し、調査することで新たな事実が判明することを期待します。写真を提供戴いた、有限会社白アリの田中 田中義治氏に感謝します。大正時代の写真 豊国工業社鹿児島総本部那覇支部事務所 田中善蔵氏の紹介九州支部廣瀬博宣この人写真1 豊国工業社工事写真図1 亜砒酸ガス注入器