ブックタイトルagreeable 第16号(平成22年10月号)

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概要

agreeable 第16号(平成22年10月号)

オピニオン1 Agreeable 2010/101.木材保存剤とは木材や木造建築物(以下「木材等」と呼ぶ)は、腐朽菌、カビ、シロアリ、ヒラタキクイムシなどの害により腐ったり、食害を受けることは周知の通りです。木材等を、これらの害から保護することは、建築基準法にも謳われていますように、必要不可欠な手段です。このような生物害の予防または駆除に用いられる薬剤を、木材保存剤と呼びます。2.木材保存剤の種類木材保存剤等には、木材等を加害する対象生物、薬剤処理する対象物(表面処理用、加圧処理用、接着剤混入用、土壌処理用、ベイト工法用など)、薬剤処理する場所(現場処理用、工場処理用)など、使用目的によって、左記のような種類があります。●木材防腐剤:腐朽を防止するための木材処理薬剤●木材防蟻剤:シロアリ食害から保護するための木材処理薬剤●木材防黴剤:カビの発生・生育を防止するための木材処理薬剤●木材防虫剤:シロアリを除く食害虫の駆除・予防するための木材処理薬剤●木材防腐・防蟻剤:腐朽及びシロアリ食害から保護するための木材処理薬剤●防蟻剤(土壌処理用):シロアリ食害から保護するための土壌処理薬剤●保存処理木質材料:腐朽や食害を予防するための薬剤を処理した木材・木質材料●保存処理非木質材料:腐朽や食害を予防するための薬剤を処理した非木質材料3.木材保存剤の法的規制家庭生活およびその周辺に棲息する害虫、その防除薬として使用される殺虫剤、その法的規制、および所管省庁などを比較すると、その違いがわかりやすいでしょう。家庭で利用されている蚊取り線香やエアゾール剤といった家庭用殺虫剤は、薬事法に基づいて安全性が評価され、農業生産現場で使用される農業用殺虫剤は、農薬取締法に基づいて、それぞれ安全性が評価されている。それでは、シロアリ防除薬は何に基づいて安全性が評価されるのか。シロアリは、衛生害虫でも、農業害虫でもなく、不快害虫として位置付けられるために、経済産業省の所管にかかわる化学物質の審査および製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という)に基づいて、人の健康や環境への影響など各種試験が求められ、そのデータから安全性が評価されます。このように、木材保存剤は化審法の規制の範疇に入ります。化審法において、化学物質に登録されている物質に限られます。農薬として登録されている化学物質でも、化審法に適合していないものは認定審査の対象になりません。従って、化審法の登録番号(官報公示番号)は不可欠となります。また、成分および製品の特性により、毒物および劇物取締法(「毒劇物法」という)、消防法、その他環境汚染防止に関する法律の規制に該当するものは、それに従うことになります。また、医薬品は国の承認や許可制度、農薬は国の登録制度が適用されていますが、不快害虫にあたるシロアリの防除薬には適用されません。法律と審査する所管庁は通商産業省や厚労省などにまたがってはいるが、直接規制する法律がないため、農薬取締法や薬事法に準じた自主基準を作成し、それに基づいて規制しています。従って、審査を受け、承認や登録を受ければ、安全性と効力が確保されることになります。4.木材保存剤の審査と認定のしくみ木材保存剤の保存性能や安全性の審査は、財団法人日本住宅・木材技術センター(以下、「センター」という。)に委託されています。センターは、農林水産省と国土交通省の許可を受けて、設立された公益法人です。センター内に設置された木材保存剤等性能審査委員会(以下「審査委員会」という)に諮られ、審査が行われます。センターが定めた「木材保存剤等性能審査規程」(以下「審査規程」という)に従い、その性能および適格性について、広範な視野に基づいて木材保存剤の適否について審査を行います。審査委員会は、中立的立場の学識経験者等で構成され、審査結果をセンター理事長に答申することになっています。審査を受けたい者は、審査規程に従って申請書を作成し、センター理事長に申請する。なお、センターへの申請者は、「公正・中立な立場から、認定または認証を行うことができる能力がある者として、センターが認めた機関」と規程に定めています。審査項目は、木材保存剤の保存に関する性能「保存性能」、および、木材保存剤の成分および製品の人畜や環境に対する安全性「安全性」に関する説明資料です。安全性に関する説明書は、「安全性に関する説明書記載要領」に定める成分、製品の毒性試験データ、土壌、水中における分解性、残留性に関する資料、散布による気中濃度の測定値など施工の安全に係るデータ及び安全性に関する説明資料が求められます。審査申請書に付属資料として提出された、これらの説明資料を基に厳密に審査されます。効力試験、安全性試験、環境への負荷試験、使用方法、廃棄方法などを総合的に審査した結果に基づき、白対協及び保存協会が、それぞれ認定、登録、更新を行うシステムになっています。 (つづく)環境とコンプライアンス①?木材保存剤の法的規制?東京農工大学名誉教授・農学博士    東京農工大学環境安全管理センター  安部 浩殺虫剤の用途別分類と法的規制害虫分類法的規制使用薬剤名所管省庁カ、ハエ、ゴキブリ衛生害虫薬事法家庭用殺虫剤厚生労働省カ、ハエ、アブ衛生害虫薬事法動物薬農林水産省カ、ハエ衛生害虫薬事法防疫剤厚生労働省ウンカ、ヨコバイ農業害虫農薬取締法農薬農林水産省シロアリ不快害虫(家屋害虫) 化審法木材保存剤経済産業省*(国土交通省)*シロアリは羽蟻が群飛すれば不快害虫ですが、木造建築物を損壊させるものとなると、家屋害虫です。その意味では、シロアリ防除剤は国土交通省(建設省)所管になります。しかし、該当する法律がないので化審法を適用せざるをえないのです。