ブックタイトルagreeable 第18号(平成23年4月号)

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概要

agreeable 第18号(平成23年4月号)

1 Agreeable 2011/4会員のページ昭和36年から農林省林業試験場でシロアリの研究が発足することになり、私はその担当者として5月に採用され、保護部に配属されましたが、筑波研究学園都市構想が閣議決定されたことから、当時目黒にあった林業試験場構内に建設予定のシロアリ実験棟は凍結され、旧貯木池を利用した研究室ができたのは3年後のことでした。協会は全日本しろあり対策協議会時代で、昭和38年12月に防除士規程が施行され、39年に書類選考で第1回の防除士が誕生したのは50年も昔のことです。昭和38年4月に森八郎先生から呼び出しがあり、日伸ビルにあった協会事務所へ伺うと、防除士資格試験用のテキストや一般向け冊子として「しろあり防除ダイジェスト」を発行することになったので、第1章シロアリの昆虫学的知識を分担執筆せよとのお話でした。大急ぎで項目を組み立て、森先生と協議して項目と内容の整理を行って執筆方針を決めました。この第1章を、Ⅰ形態と分類、Ⅱ生理と生態、Ⅲ被害と探知の3項で構成し、ⅠとⅡ項を私が執筆することになりました。シロアリは、害虫関連以外でも社会生活、木材の消化など面白い昆虫で、多くの報告があります。昭和31年(1956)にスナイダーが詳細な文献目録を作成し、昭和36年にその追加が出ましたので、九州大学、国立科学博物館、農業技術研究所などで関係文献の蒐集に努めました。当時は乾式複写機やコンピューターのない時代で、発売されたばかりの携帯用湿式複写機は小型のトランクほどもあり、また複写紙は乾燥に時間がかかりましたので、大量に複写した日は部屋中に広げて扇風機で送風乾燥するという状態でした。当時纏まったシロアリの本として、日本では松村彦五郎「白蟻の駆除予防法」(昭和8年)、森本博「白蟻読本」(昭和34年)、中島茂・森八郎「しろありの知識」があり、また海外ではKofoid(1934)Termitesand termite control, Snyder(1949)Our enemy the termiteなどがありましたが、昆虫学的に最もよく整理されたGrasse(1949) Traite deZoologie中の Termitesを下敷きに、多くの文献を参考にして原稿を仕上げることができました。最初の昭和39年版「しろあり防除ダイジェスト」は、シロアリの昆虫学的知識、シロアリ防除薬剤に関する知識、シロアリ防除処理仕様書に関する知識、シロアリ防除処理施工に関する知識、建築に関する知識の5章から構成され、10 名で分担執筆しましたが、昭和56年版で「シロアリ防除処理ダイジェスト」に改名して木材、シロアリ、腐朽、被害、探知、防除薬剤、建築物の7章に、また昭和60年版は「防蟻・防腐処理ダイジェスト」へ改名して、木材、シロアリ、腐朽、防除薬剤、建築物、防除処理の6章に変更されました。昭和62年に「しろあり及び腐朽防除施工の基礎知識(防除施工士受験用テキスト)」と改名されましたが、章たてはそのままで、現在に至っています。このテキストは、防除施工士資格検定試験のための第1次と第2次の講習で使用されましたが、昭和56年には第2次(実務)指定講習会テキストも出版されました。このテキストについては、〝むずかしすぎる?、〝すぐに役立つ内容だけにしろ?、〝防腐も表題に加えよ?、〝基幹知識として日本産シロアリ全種を挙げよ?など多くの意見が寄せられました。新知見を加えながらこれらの意見を取り入れて改訂を繰り返し、現在の形になったのは昭和62年版からです。昭和39年以降、社会性昆虫学や自然におけるシロアリの役割、防除法の発展などで多くの著書が刊行されましたが、防除業者や一般向けのものとして、Harris(1969)Termites:Their recognition andcontrol, Pearce(1997) Termites,Biology and pest management,Hadlington & Staunton(2008)Australian termites(第3版)があります。これらと較べると、協会のテキストは表題の示すように日本を対象地域とした「防除施工の基礎知識」に重点が置かれていることは確かで、基礎知識としてはかなり高度な内容です。もし英語で出版されておれば、国際的にも高い評価を得られたものと思います。協会50年の歴史とともに歩んできた「テキスト」が、新法人へ移行した後も発展を続けることを期待しています。50年の歴史をもつ「防除施工士受験用テキスト」森本 桂九州支部長