ブックタイトルagreeable 第18号(平成23年4月号)

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概要

agreeable 第18号(平成23年4月号)

オピニオンAgreeable 2011/4 66.木材保存剤の安全性農薬と木材保存剤の大きな相違点は、農薬は農業環境に人為的に撒布され、食物を通して一生涯にわたって暴露されるのに対して、木材保存剤は居住環境に人為的に撒布され、大気呼吸・皮膚接触を通して一生涯にわたって暴露されるものです。農薬の食品中の残留許容基準は、食品衛生法で定められ、許容基準を超えないように安全使用基準があるわけです。木材保存剤にはついては、規制する法律がありませんので、居住空間での安全性の重要性を考慮し、審査規程と別個に、農薬の安全性基準に準拠した「安全性に関する説明書記載要領」を定め、記載されるデータおよび安全性に関する説明書などを含む資料の提出を求めています。当然のことながら、居住空間における空中濃度測定もガイドラインとして含まれています。なお、農薬として登録されているものは、農薬登録における農薬抄録の写しをもって代えることができます。?識別及び物理的化学的特性に関する資料①識別に関する事項(CAS番号、化審法番号、化学式、構造式、分子量、有効成分組成)②物理的化学的特性に関する事項(高純度品)有効成分原体が既に農薬として登録されているものと同一原体の場合は、農薬登録における農薬抄録の「物理化学的性状」の写しをもって代えることができる。?人畜毒性に関する資料①有効成分原体(変異原性、28日間反復経口投与毒性、急性神経毒性)②有効成分原体及び製剤(急性経口毒性、急性経皮毒性、急性吸入毒性③製剤(眼一次刺激性、皮膚一次刺激性、皮膚感作性)?水産動物等に対する毒性に関する資料有効成分原体及び製剤(コイに対する急性毒性、ミジンコに対する急性毒性)なお、水生生物への蓄積性(生物濃縮性試験)に関する資料がある場合は添付する。?動物及び土壌、水中における分解性、残留性に関する資料有効成分原体の土壌吸着性又は土壌溶脱性、加水分解速度、必要に応じ水中の光分解性?空中濃度測定ガイドライン現場使用に係る薬剤に関しては、作業者及び現場周辺環境、並びに現場居住者に係る安全性について、以下に関する実験的データ(又は文献)を添えて、安全性が確保されると考える旨の説明書を提出する。床下散布又は土壌処理時の床下及び床上空間における有効成分の空中濃度推移測定データ。?その他次のような場合に関する説明書変異原性、催奇形性等が陽性、魚毒性がC類(コイでの半数致死濃度が0.5ppmより低いもの)に相当、原体が毒物または劇物に相当するものについても同様、使用において問題がないと考える根拠を明記する。7.化学物資規制の動向?リスクコミュニケーションの重要性リスクコミュニケーションは現代風に表現すれば、「見える化」が当てはまるでしょう。化学物質の利用拡大に伴う環境汚染を防止するためには、環境リスクを管理することが重要です。環境リスクをどのように管理すべきか、市民や事業者、行政などの様々な関係者が、化学物質のリスクに関する情報を共有し、相互理解を深めるためのリスクコミュニケーションが、将来ますます必要になってきます。リスクコミュニケーションを行う活動をレスポンブル・ケアと呼ばれ、2000年現在、日本を含む世界46カ国で導入しています。?注目される欧州(海外)の規制動向世界の市場に流通している化学物質は5万種を超えるといわれます。毎年、誕生する新規化学物質は数百種に上っています。現在流通している多種多様な化学物質すべてにおいて、リスク評価が行われているわけではないため、人の健康や生態系への影響の大きさが分かっていないものが数多く残されています。こうした中で、化学物質管理に関する先進国間の協調政策が、OECD主体に進められていますから、先進国欧州の化学物質管理動向に注目しないわけに行きません。木材保存剤関係では、欧州理事会指令(BPD-98)と欧州化学品規制法(REACH, Registration, Evaluation,Authorization and Restriction ofChemicals)に注目されます。REACHの制定の動きを受け、日本では化審法を改訂する動きが急速に進んでいます。また、指令BPD-98では、木材保存剤も対象にあげられ、登録・承認について統一的な規則制度を設ける方向です。登録されていない製品は、欧州各国で認められなくなる可能性があります。21世紀になって、特定化学物質の環境への排出量の把握および管理の改善の促進に関する法律(化学物質管理法、化管法)が制定され、これにより、事業者による化学物質の排出量等の把握・届出(PRTR制度、Pollutant Release andTransfer Register)や化学物質等安全データシートの提供(MSDS制度、Material Safety Data Sheet) が設けられました。化学物質の管理は、科学の発展とともに、化審法および化管法に基づいたより安全、安心を目指したものへと変換して行くと予想されます。8.木材保存剤の安全性 Q&A問1 「最近の化学物質の管理は国際的な調和と協調のもとに取組が強化される方向にあり、新規に製造、輸入される化学物質については事前審査が義務付けられます。」とありますが、それ以前に認定された剤とそれ以降のものとでは異なる基準が適用されているのでしょうか?答 新規と既知で異なる基準が適用さ環境とコンプライアンス③?木材保存剤の法的規制?東京農工大学名誉教授・農学博士    東京農工大学環境安全管理センター  安部 浩