ブックタイトルagreeable 第20号(平成23年10月号)

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概要

agreeable 第20号(平成23年10月号)

11 Agreeable 2011/10ひろば1995年、ロイヤル・ニュージーランド・ヨット・スコードロンはロサンゼルスオリンピックのフィン級(別名ディンギー、1人乗り1本マスト、帆も1枚とヨットの原点です)ゴールドメダリストであるラッセル・クーツ率いるチーム・ニュージーランドによってカップを奪取。以後、ニュージーランドはオークランドにアメリカズカップヴィレッジを開発、艇庫を中心に高級コンドミニアムを分譲し、観光資源としての活用を目指したのです。わが国もニッポン・チャレンジで参戦していましたが、1992、1995、2000年のいずれもルイヴィトンカップ準決勝で敗退し、以後残念ながら不参加が続いています。しかしながら初参加での挑戦艇シリーズ準決勝進出は奇跡的と賞賛されました。ビレッジにはタックスヘイブンの国々の国旗を掲げた豪華クルーザー(クルーザーといっても数百トン以上)が多数係留されて、世界中の大金持ちが観戦に集っていることが実感されました。近年のアメリカズカップは海のF1レースと言われるように、セーリング技術だけでなく、設計、造船、分析、ハイテク材料の開発製造技術を総合した、まさに国力の総合格闘技の様態になっています。そのため、ほとんどの参加チームの国ではジェット戦闘機を国産しています。日本が参加を取りやめた2003、2007年には中国チームが参戦、2010年は挑戦者代表の法的根拠を巡る裁判沙汰のため、挑戦艇決定シリーズは中止されましたが、第34回にも引き続きエントリーしているし、韓国チームが初参加することが決まっています。世界に冠たる海洋王国、わが日本は低迷する経済状況から残念ながら不参加です。東日本大震災の復興と明るい話題としても参戦すべきと思いますが、シンジケートの結成に必要な200億円程度が捻出できないのです。2000年大会はニュージーランドがイタリアのプラダ・チャレンジを5―4で退けカップの防衛に成功し、クーツは国民的英雄の地位を不動のものにしました。また、確かな経済効果から、オリンピック開催年とずらして2003年に第31回大会が開催されました。当時、クーツの年俸はわずか数百万円。そこにスイスのチーム・アリンギが数億の年俸を提示、クーツは主要ベテランメンバーとともにスイスチームに移籍。第31回大会はスイスチームが挑戦艇となったが、実質は新旧のニュージーランド人同士の戦いになり経験の差からクーツのスイスチームが圧勝、カップは初めてヨーロッパに移ることになりました。この結果、ニュージーランドは大きな観光資源を失い、NZドルが下落しています。レマン湖が根拠地のアリンギは大会史上初めて第3国のスペインのバレンシアでレース開催を行い、第32回大会は挑戦艇エミレーツ・チーム・ニュージーランドを5―2で破って防衛しています。このときはまれに見る激戦で、ニュージーランド3勝目かと思われたレース展開になったのですが、ゴール直前にペナルティー履行のため1回転したニュージーランドは失速、アリンギにわずか2秒差で敗退しています。この時、もう少し早めにペナルティーを履行していれば大会全体の行方はニュージーランドに傾いたと多くの人々が思っています。また、第32回前にアリンギのオーナー、エルネスト・ベルタレリと運営方針をめぐって対立したクーツはアリンギを脱退したため、規定のため32回大会へはどのチームからも参加していません。ベルタレリは本業の製薬会社の株を手放し、アメリカズカップをビジネスとして恒久的な利益を得ようとして、スポーツマンシップにもとる運営方法をとろうとしたことが33回大会の裁判劇につながりました。これまでは、シングルハル(ひとつの船体)でのレースのため、全長90フィートの艇の性能もさることながら、クルー17名の操船技術が大きなウエイトを占めていたため、クルーの動きはまさに格闘技そのもので観戦の醍醐味がありました。第33回大会はカップ史上初めてカタマラン(双胴艇)のアリンギ対トリマラン(三胴艇)のBMWオラクルとマルチハル(多胴艇)での戦いとなり、圧倒的に艇の性能が支配するようになってしまいました。BMWオラクル艇は縦横90フィート、セールの高さ223フィート68m と巨大なハイテクマシンといえます。大会中の最高速は33ノットを記録、開発途上では18ノットの追い風で40ノット近い高速を出しています。20階建てのビルが時速60㎞で疾走している(ほとんど滑空に近いが船体の一部が海面に接していないと反則です)と中継アナウンサーが絶叫しておりました。第34回大会は全長72フィート、ハードセルのカタマラン(双胴艇)とプロトコルが決定しています。オラクルチームのCEOにはクーツが就任、セーリングの楽しさを多くの人々に知ってほしいとの願いから、サンフランシスコのベイサイドから肉眼で観戦できるようにコース設定が行われるようです。皆様も一度観戦してみませんか?