ブックタイトルagreeable 第20号(平成23年10月号)

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概要

agreeable 第20号(平成23年10月号)

乾材害虫Agreeable 2011/10 18「シバンムシ類」は世界では約2, 000種、日本では約70種が生息しています。木造文化財や古い民家の構造部材といった「古材」に被害を与える種としてケブカシバンムシ(写 真1)、オオナガシバンムシ、マツザイシバンムシなどが知られています。ケブカシバンムシに代表される「古材」を好むタイプのシバンムシ類は、木材の内部に生息し極めて遅い速度で加害していきます。坑道に1㎜前後の糞(写真2)を大量に蓄積し、被害が進むと材表面に直径3㎜ 程度の成虫の脱出孔が多くみられるようになるのが特徴です(写真3a-c)。名だたる神社・仏閣や木造の仏像まで被害に遭っており、当該文化財の建立当時から何世紀にも亘って被害を及ぼし続けていると考えられます。したがってなかなか成虫や幼虫にお目にかかれず、詳しい生態についても未解明な点が多くあります。Furniture beetleと称されるヨーロッパに広く分布するAnobium punctatumはケブカシバンムシの近縁種に関しては、次のような生態的特徴が知られています。? 古材を好む。一般に築後5年未満の場合は被害はほとんどないが、10年以上経過すると食害が顕著にみられる? 一度の産卵数は少なく、かつ長寿命? (シロアリと同様)腸内に窒素固定細菌を共生させ、空気中の窒素を利用している? 木材中のグルコースを分解可能で、セルロースおよびヘミセルロース分解能もある。? 辺材・心材区別なく食害? 乾燥した材(気乾材)を食害可能であるが、含水率の高い材の方が食害をうけやすい家庭内では、前述の古材を好む木材害虫タイプとは別の、食品害虫タバコシバンムシ、ジンサンシバンムシの方がなじみ深い?かもしれません。タバコシバンムシは、時々い草で作った畳に発生して問題になるほか、近年ではコウリャン(高梁:イネ科植物)で作ったボードに発生して話題となりました。特にタバコシバンムシやジンサンシバンムシは各々、多くの昆虫が加害しないタバコ(ニコチン含有)、高麗人参(ジンセンノシドに代表されるサポニン類含有)に発生することからその名がついたほど、体内に独得の解毒機構を有している「変わり者」の昆虫です。独立行政法人森林総合研究所大 村 和香子シバンムシ類写真1 ケブカシバンムシ成虫1mm写真2 ケブカシバンムシの糞      (長径が1mm程度の顆粒状)写真3 ケブカシバンムシ被害材a. b. c.