ブックタイトルagreeable 第21号(平成24年1月号)

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概要

agreeable 第21号(平成24年1月号)

はその被害の有無にとどめました。そのために小屋裏については検査対象外としています。現在静岡県ではわずかの輸入家具によるアメリカカンザイシロアリの被害が報告されていますが、建造物の被害は報告されていません。しかし、雨漏りや雨仕舞の不良により、直接ヤマトシロアリの羽アリが生息し、床下のみの検査だけでは不充分ではないかと考えられてきています。もしここで小屋裏の検査まで行うことになると、前段の実施日にも関係しますし、会員への負担も大きくなります。昨年は何とか支所で日当と交通費を捻出しましたが、もし検査範囲を広げることになると、ボランティアの域を越えるのではないかと心配しています。ただ、今後を考えると、昨年発行された『文化財建造物の蟻害腐朽検査マニュアル』に早急に基づくべきだろうと検討しています。そのためには、私たちが不得意と思われる、カビ類・木材加害甲虫、その報告書の正確な言葉の使い方など研修しなければなりません。 まだ問題点があります。「蟻害・腐朽検査員」の数が、「しろあり防除施工士」の数に比すると、極端に少ないことです。報告書を作成するのはこの「蟻害・腐朽検査員」なのですが、あまりにも少なくて、現場分けをするのに困ることがあります。やはり何らかの方法で、『蟻害腐朽検査員』の数を、『しろあり防除施工士』くらいの数まで増やす必要があるでしょう。一県に数十名では話になりません。 政府は文化財の保存と同時に、かつて行われていたクラッシュアンドビルトをやめ、長期優良化住宅政策を始めています。経済の活性化を狙い、壊しては造り、壊しては造りを繰り返してきたわけですが、今後については、一度建てた家を何世代も使えるだけ使おうという政策です。ただ、そこに危険が生じては問題外です。一般の家が三十年サイクルで造り直され、文化財といわれる建造物が何百年も存在するということとは、つまるところ「手が入っているか、いないか」ということです。私たちが現在行っている『文化財蟻害腐朽検査』は、この「手を入れる」ことに他なりません。定期的に点検し、問題箇所があればすぐに対処する。そうすれば建造物の寿命は驚異的に延びるでしょう。その一助を担いたい、というのが私たちの願いです。専門家による「定期点検」が、今後の文化財保護、長期優良化住宅の普及の鍵になるのではないでしょうか。 私たちは試みに昨年、報告会の市民へのオープン化を決め、時間はありませんでしたが新聞で告知をしてもらいました。無理だと思いましたが、2名の方に出席をいただきました。やればできる。今後の研修会、報告会等はオープンで行いたいと思っています。 今年は新しい組織形態で事業を行うことになります。この『文化財蟻害・腐朽検査』も進化しなければなりません。協会、行政、一般の人々が連携して新しいものを創り、一般住宅にまで普及させることができれば、それがわたしたちの本望です。 最後に付け加えておきますが、この四年間の経験から、「非破壊」にとらわれてはいけません。文化財といえども床下に入れなければ、つまり、見ることが出来なければ、点検ができないということです。見ることができないものは判断できません。担当者に話をすれば理解していただけます。専門の大工さんの手配もしてくれます。私たちの目的と願いをしっかり伝え、まず、しっかり見ることができるようにしていただくことが「目視」の効用でしょう。見えないものに判断は下せないのです。(本年の検査実施日は4月6日に決定しました。)15 agreeable vol.21 january 2012/1