ブックタイトルagreeable 第21号(平成24年1月号)

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概要

agreeable 第21号(平成24年1月号)

“シロアリ”と“しろあり”の違い 皆さんは、“シロアリ”と“しろあり”の違いはおわかりになるでしょうか?もちろん読み方は同じですが、カタカナとひらがなの違いには大きな意味があります。 “シロアリ”は、生き物としてのシロアリを意味しています。言い方を換えれば、生態系の一員としてのシロアリを考える場合には、“シロアリ”というカタカナを使うことになります。では、“しろあり”はどうでしょうか?これは、私たちの生活と直接関連した意味でのシロアリのことです。つまり、“しろあり被害”とか“しろあり問題”などのように使う言葉です。 今回から、「シロアリの知識」として、agreeable に連載ページをいただくことになりました。まずは、“シロアリ”と“しろあり”の違い、すなわち、生態系の一員としてのシロアリと害虫としてのシロアリの違いから紹介したいと思います。“シロアリ”は植物遺体の分解者  生態系における“シロアリ”の最も重要な点は、枯木、枯枝、落葉などの植物遺体(専門的にはリターと呼びます)の分解者としての役割です。特に熱帯や亜熱帯地域においてその役割は重要で、ある調査では、アフリカの熱帯サバンナでは枯れた草の8割が一度シロアリのお腹を通ってから自然に還ることが示されています。つまり、シロアリは熱帯・亜熱帯の生態系において、最も重要な「バイオ・リサイクラー」なのです。また、日本でも、例えば公園のマツの切り株にシロアリが巣くっているのを見られた方も多いと思います。それでは、どのくらいのシロアリが生態系の中で生活しているのでしょうか。 生態学の分野では、1平方メートル当たり10グラム以上存在する生物がいた場合、その地域の生態系での優占種と考えます。例えば、アフリカのサバンナにおけるシマウマやヌー、ガゼルなどの草食動物、温帯の牧草地におけるミミズ、あるいはもっと身近なところでは日本の人口密度から計算した結果がこれに相当します。実は、シロアリは熱帯の生態系においてこれを凌駕する量を示すのです。アフリカのカメルーンでは、これまでに1平方メートル当たり100グラムという最大値が報告されています。これは、数に換算すると1万頭(!)という大きな値です。このような場所では、シロアリは分解者としてだけではなく、その地域の生態系自身を変えることのできる「エコシステムエンジニア」と見なされています。このようにシロアリが圧倒的な存在量を示す熱帯地域では、シロアリに完全に依存した生き物が生活しています。アフリカのツチブタ、南米のアリクイ、オーストラリアのナンバットがそうです。写真にはアフリカのサバンナにおける優占種として、草食動物とシロアリ塚の様子を示しました。日本にもたくさん存在する“しろあり” では、日本ではどうでしょうか?ここで少し簡単な計算をしてみます。(社)日本しろあり対策協会の調査によると、住宅の約3軒に1軒の割合でしろあり被害があると推定されています。100平方メートル(30坪)の敷地の住宅の3軒に1軒にシロアリがいるとすると、300平方メートルに1つのシロアリの集団(専門的にはコロニーと呼びます)がいることになります。日本に一番広く分布するヤマトシロアリでは、1つのコロニーが最大30万頭から構成されていることが報告されているので、計算では1平方メートルに平均1000頭ものシロアリがいることになります。ヤマトシロアリの1頭の重さは2ミリグラムぐらいですから、これは2グラムという値になります。も京都大学生存圏研究所 吉村 剛シロアリの知識第一回“シロアリ”と“しろあり”agreeable vol.21 january 2012/1 2