ブックタイトルagreeable 第22号(平成24年4月号)

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概要

agreeable 第22号(平成24年4月号)

この成年後見制度は「事理弁識能力を欠く状況にある者」のための制度であって、高齢者を直接保護するものではないし、また審判によらなければ利用することができない。任意の後見契約も、主として、高齢者の財産保護を目的として作られた制度であり、事前に任意後見契約を公正証書にするなど厳しい要件が求められている。 その他、民法上の錯誤(真意と表示行為の結果との不一致を表意者が気付かずになす意思表示)による無効や詐欺による取消し、不法行為による損害賠償など本事例に適用できそうな規定は種々あるけれども、いずれも高齢者であることを理由として保護を認めるものではない。 ②高齢者であることを理由として、前述のような高齢者の取引弱者としての特性にかんがみて、クーリング期間を延長するとか、高齢者取消権といった制度を導入することの是非であるが、消費者契約の撤回や取消しを高齢であることを理由に安易に認める法制化は、高齢者保護に資すると思われるが、これは自立する権利を否定することにもなる。 高齢者が撤回権や取消権を当然に有すると言うようなことになれば、高齢者を当事者とする取引は行われない場合が多くなると考えられる。未成年者と違い、一人暮らしも多い高齢者(今後、高齢者人口は増加の一途にある。)にとって、取引が成立しないとなると死活問題に発展することにもなる。 しかも高齢者の事理弁識能力の低下は、個人差が非常に大きく、高齢者の年齢が何才だから保護が必要であるというような安易な線引は、出来ないところが未成年者とは違う点である。このことは、線引きが難しいという技術的な問題にとどまらず、仮に高齢者の個人差を考慮せず、一定の年齢以上の健常な高齢者の行為能力を強制的に奪うような制度を設ければ、経済的自由権の侵害及び年齢差による差別の問題にも発展し、憲法上の問題にもなる。 ③高齢者であるということを直接の理由として、法制化による保護が難しいとすると、現制度を適用するにあたり、高齢にともなう判断能力の減退という事情を、消費者に有利な一つの事情として、これを加味して判断するというのが、現段階では、適正な解決策であると考える。 本判決においても、裁判所はBが高齢で判断能力が相当程度減退していたことを認め、Aの従業員が虚偽の事実をBに簡単に信じこませることができたとして、Aの詐欺事実を認めている。 また特定商取法7条4号および同施行規則7条2号には、販売業者または役務提供事業者が「老人その他の者の判断力の不足に乗じ、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結させること」をしたため、「訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるとき」には主務大臣は、当該業者に「必要な措置をとるべきことを指示することができる。」としている。 これは行政的な取締規定ではあるが、ここに挙げられている禁止行為類型は、民法90条違反(公序良俗)の一つの類型である暴利行為とも通じるものとなっており、このような場合に契約の無効を柔軟に認めることといった方法も高齢者保護の助けになる。4.リフォーム詐欺の特質 ①リフォーム詐欺が発生する状況は、業者が消費者の自宅を訪問し、請負契約を締結する。したがってリフォーム詐欺は、訪問販売であると同時に役務提供契約の側面ももっている。 訪問販売は、業者が自宅を訪問して契約を締結するという点で、消費者にとって不意打ち的であり攻撃的な販売方法であると同時に第三者の目の届かない場所で勧誘が行われるために、後のち、どのような勧誘が行われたかの証拠が残りにくいといった問題のある販売方法である。 特に役務提供契約の場合は、物品の売買に比べて、施工内容があいまいになりがちで、トラブルが生じやすいといえる。本事例のリフォーム契約でも、例えば契約の契約内容について見ても、灯油漏れの修繕だったのか、古くなった灯油タンクの入替えだったのかを問題にする余地がある。前者であれば、灯油消費者に代わり不利是正朝日新聞(2011年11月)agreeable No.22 april 2012/4 8