ブックタイトルagreeable 第22号(平成24年4月号)

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概要

agreeable 第22号(平成24年4月号)

漏れがないのにタンクを入れ替えることはそれ自体が目的に従った施工とはいえないことになり、後者の場合であれば、灯油漏れの有無にかかわらず灯油タンクを入れ替えることが契約に従った施工となる余地があり、債務不履行責任や錯誤による無効を考える際にも差異が生じてくることになる。 ②このような問題への対策として、第1に、訪問販売ではクーリングオフが可能とされており、消費者から契約締結の意思表示を一方的に撤回することが認められている。(特商法9条)これにより一定期間は、消費者は、証拠の有無にかかわらず、契約の拘束力から解放される。 第2に、訪問販売では契約締結後の書面交付義務(特商法4条・5条)が課されており、締結された契約内容を後から確認することが可能なように工夫されており、この書面交付がなされないあるいは不完全な場合には、行政的な罰則のほか、クーリング・オフ期間の延長が認められる。(特商法9条1項)また業者が書面を交付したとしても、書面から契約内容が十分明らかでない場合、勧誘方法や契約内容が不当であることを推察させる事情として実際問題業者に不利に働くことになる。 本判決では、Aの作成した契約書は、工事の内訳すら明らかでなく、いい加減なものであり、かつその高額な代金についても、Aから合理的な説明ができなかったという事情がある。こうしたことは、裁判官の心証を相当程度悪くしたであろうし、Aの詐欺を認定する方向に働いたと考えられる。5.本判決は、裁判所がBの年齢や、Aの交付書面などを全体として総合的に判断をし、詐欺の成立を柔軟に認めたことがこの判決の特徴である。6.日常の生活の中で商品や役務を購入したものの、「納得できない」等の消費者トラブルが後をたたない。特に、訪問販売や電話勧誘販売などの特殊販売(店舗取引と対比して、このような特殊な取引形態で行う取引のこと)と呼ばれるもののトラブルが圧倒的に多い。訪問販売では、業者が契約するつもりもなかった消費者を勧誘して一気に購入する気持ちにさせようとするため、本事例のように説明内容に問題があるケースが少なくないし、消費者が断わっているのに執拗かつ強引に販売していたケースもあった。また、これらの取引は、密室で勧誘や契約の締結が行われるため、不当な勧誘行為の有無が水掛け論となりがちであり、民法の詐欺・強迫による取消や錯誤無効によって消費者を不当な契約から解放するには、勧誘内容の立証の難しさなどから、有効な救済手段とは言い難かったが2000年に訪問販売法→特商法に改められ2008年には、政令指定商品・役務制度の廃止、訪問販売に過量販売解除制度などを導入し改正された。 元々、消費者と業者の間には情報や交渉力の格差があるといわれているが、とりわけ訪問販売や電話勧誘販売などの特殊販売は、消費者にとって不意打ち的であること、密室での取引であることなどが原因となって、構造的に消費者被害が発生しやすい。 特商法は、第1条に示されているように、訪問販売取引を公正にし「消費者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、消費者等の利益を保護」することにその目的がある。 他方、消費者保護立法といわれる消費者契約法においても「消費者と事業者との間の情報の質及び量ならびに交渉力の格差にかんがみ…消費者の利益の擁護を図りもって国民生活の安定向上…に寄与する」ことを目的とする旨の規定がおかれている。 このように、両法の立場は、訪問販売に関する消費者等の利益を保護せんとする意味で、共通の基礎を有するものである。消費者契約法については、改めて記述いたします。以上悪質商法にご用心!!日本経済新聞(2010年6月)9 agreeable No.22 april 2012/4