ブックタイトルagreeable 第22号(平成24年4月号)

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概要

agreeable 第22号(平成24年4月号)

シロアリの社会はニオイの社会 このようないろいろな階級からなるシロアリのコロニーですが、その社会生活は決してお互いを眼で確認しながら行われているものではありません。シロアリの働きアリと兵隊アリでは複眼が発達しておらず、視覚によるコミュニケーションは不可能です。では、シロアリにとって眼の代わりになるものとは一体何でしょうか。それは触角を通じて認識されるニオイ=化学物質です。つまり、シロアリにはニオイの道が見えていると言ったほうがより正確な表現となります。 昆虫のニオイによるコミュニケーションの主役は、いわゆるフェロモンと呼ばれる物質です。これは、体内で分泌されるホルモンとは異なり、体外に分泌されて同じ種類の仲間に特有の反応を引き起こします。シロアリでは、性誘因フェロモン、階級調節フェロモン、道しるべフェロモンの3種類が良く研究されていますが、これらは名前の通り、群飛のあとで雌が雄を引き寄せるための物質、階級分化を調節する物質、餌のありかを仲間に教えるための道しるべ物質です。ご存じの方も多いと思いますが、ヤマトシロアリの働きアリを紙の上に置き、油性ボールペンで頭の前を出発点として線を引くと、シロアリはいつまでもボールペンの後をついてきます。これは、油性ボールペンのインクを溶かす溶剤に含まれるフェノキシエタノールという物質が、シロアリの道しるべ行動を引き起こすために生じる現象ですが、シロアリとニオイの関係を端的に示しています。写真には、たくさんのシロアリがボールペンの線の上を歩いている様子を示しました。シロアリの社会行動を利用した防除システム これまで述べてきたように、シロアリはたくさんの個体で協力しながら社会生活を送っているわけですが、その社会行動を逆手にとった防除システムも実用化されています。その一つが、「ベイト工法」と呼ばれるものです。この工法のおまかな流れは次の通りです。① 木材や段ボール、パルプ、セルロースなどのシロアリが好む餌を容器に入れて被害発生場所の近くに設置する。② 定期的に観察を行い、たくさんのシロアリが集まったところで、殺虫有効成分を含有した毒餌(ベイト)と入れ替える。③ 継続的にベイトを取り換え、多くのシロアリに摂食させ、コロニーに持ち帰らせる。④ 食物交換によってコロニー全体に殺虫有効成分を蔓延させて、その衰退を図る。 つまり、シロアリが毒餌をコロニーに持ち帰って仲間に分け与えるという社会行動を利用したシステムなのです。現在、いろいろな形のベイト工法が日本でも登録されています。 また、最近シロアリ用殺虫成分として、非忌避性化合物、つまりシロアリがその存在に気付かない化合物がよく使われるようになりました。この化合物の場合、シロアリの体表に付着した化合物がお互いのグルーミング行動によって伝搬することが確かめられています。 以上、今回はシロアリの社会についてお話しました。次回の3回目は、被害の発生と関係の深いシロアリの好き嫌いについて紹介します。写真 油性ボールペンで描いた線上を歩くヤマトシロアリ3 agreeable No.22 april 2012/4