ブックタイトルagreeable 第22号(平成24年4月号)

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概要

agreeable 第22号(平成24年4月号)

 頑丈な住まいの基本は耐震性能でしょう。建築基準法は建物が壊れても人命を守ることができる強さを建築物に求めています。数百年に一度程度、極めて稀に発生する地震(震度6強以上)に対して倒壊や崩壊しないことと、数十年に一度程度発生する地震(震度5強程度)では、損傷しない強さを備えるよう求めています。 最近では、耐震等級いくつという言葉を良く耳にすると思います。これは住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称、品確法)に基づく住宅性能表示制度で定められている耐震性能です。耐震等級は1から3まであり、建築基準法が求めている強さが耐震等級1に相当します。基準法の1・25倍の強さを等級2、1.5倍が等級3です。このほか、台風などの風圧力にも同様の性能が求められています。 木造住宅の一般的な規模と建て方では、概ね地震力の方が大きくなります。そのため、耐震等級が注目されているのです。 地震力に抵抗する構造とはどのようなものでしょうか?在来軸組構法は柱と梁で構成されています。柱や梁を太くすれば耐震性は増すのでしょうか?建物の自重など、垂直方向の力には、柱を太くすればより頑丈になります。しかし、地震力は水平方向の力です。軸組は水平方向の力に大変弱い性質があります。そこで、柱と柱の間に斜めの部材、筋かいを入れたり、構造用合板(耐力面材)などを貼り付けた壁で地震力など水平の力によって軸組が変形しないようにしています。これが耐力壁と呼ばれるものです。 建築基準法施行令第46条では、床面積あたりの必要な耐力壁の量(長さ)を定めています。どれほどの耐力壁が必要か簡単な例で見てみましょう。瓦以外の軽い屋根葺き材の軽い建物とします。この場合、2階建ての2階部分には15㎝/㎡、1階部分には29㎝/㎡の耐力壁が必要とされています。例えば、1階の床面積が60㎡とすると29㎝/㎡×60㎡から17・4m の耐力壁が必要になります。これは、間口と奥行き方向、どちらの方向にも開口部のない壁が延べ17・4m も必要ということです。このままだと出入り口とか窓などの配置が使い勝手の悪いものとなりそうです。この場合の耐力壁は壁倍率1.0で計算されています。壁倍率1.0倍とは200kgの力で幅1mの耐力壁を押した場合に、高さの1/120の変形量以下になる強さの壁のことです。壁倍率は種類ごとに決められており(表1)、組み合わせた種類の倍率を足し算することができます。ただし、最大5倍までとすることになっています。5倍の壁とは200kg×5となり1000kgの水平力で押しても1/120の変形量以下になる強い壁です。例題の耐力壁をすべて5倍のものにすると17・4m÷5ですから、約3.5mとぐっと少なくなります。但し、耐力壁の倍率が大きくなればなるほど柱の引き抜き力が大きくなり、5倍の耐力壁の場合、約3tの引き抜き力がかかることになります。このため、柱、土台、梁、筋かいなどの接合部にはその強さに応じた補強金物を使うことになっています(図1)。しかしながら阪神・淡路大震災では耐力壁の強さに応じた補強金物はほとんど使われていなかったため、軸組みが簡単にばらばらになって被害を拡大しました。現在、接合部には多種多様の補強金物が使われており、それに使用される釘やボルトなども、本数と太さが規定されています。土台と柱の接合部は蟻害や腐朽を受けやすい環境にあります。防蟻・防腐措置を怠ったり、点検や維持管理で手抜きをしていると、シロアリや腐朽のために地震に対する抵抗力が落ちて、いざという時に大変なことになります(次号に続く)。大阪市立大学生活科学部 土井 正建築の知識頑丈で長持ちする木造住宅木の住まい第二回図1 ホールダウン金物表1 建築基準法施行令第46条による耐力壁の種類と壁倍率軸 組 の 種 類倍率(1) 土塗り壁又は木ずりその他これに類するものを柱及び間柱の片面に打ち付けた壁を設けた軸組み0.5(2)木ずりその他これに類するものを柱及び間柱の両面に打ち付けた壁を設けた軸組み1.0厚さ1.5cm 以上で幅9cm 以上の木材又は径9mm 以上の鉄筋の筋かいを入れた軸組み(3) 厚さ3cm 以上で9cm 以上の木材の筋かいを入れた軸組み1.5(4) 厚さ4.5cm以上で9cm以上の木材の筋かいを入れた軸組み2.0(5) 9cm 角以上の木材の筋かいを入れた軸組み3.0以下略5 agreeable No.22 april 2012/4