ブックタイトルagreeable 第22号(平成24年4月号)

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概要

agreeable 第22号(平成24年4月号)

金請求は理由がないことになる。(甲事件)と判決している。(事例の検討)1.本判決では、高齢消費者をターゲットにしたリフォーム詐欺が問題である。住宅の修繕・改築(リフォーム)の請負工事を消費者に持ちかける「詐欺的な」取引を指している。本事例では、同一の業者の複数の社員が短期間に3回も高額な請負契約を締結しており、しかもその請負工事が不必要なものであったというのだから、その取引が詐欺的なものであったこと自体は疑う余地がない。 しかしながら、このような取引が業者から持ちかけられたとして、通常の判断能力がある消費者であれば、より早い段階でおかしいと気付いたはずである。本事例の問題を拡大しているのは、被害にあった消費者が認知症を発症している高齢者夫婦であったことで、周囲の人々が問題に気付くまでに繰り返し被害に遭っていたという事実である。またA以外の業者からも同様の被害に繰り返し遭っていたという。 したがってここでは、高齢者の消費者被害の特徴とその対策について検討し、リフォーム詐欺に特有の問題を洗い出したい。2.高齢者の消費者被害の特徴 ①個人差はあるが、人間は加齢にともない徐々に判断能力や記憶力等が減退し、相対的に物事のすじ道をわきまえる能力(事理弁識能力)が低下する。場合によっては本事例のBのように認知症を発症し、事理弁識能力が著しく低下する者もいる。その結果、健常者であればおかしいと気付いたであろう詐欺的な取引に応じてしまい、被害を受ける高齢者が跡を絶たないことになる。 もちろんすべての高齢者が消費者被害に遭いやすいと言っているわけではなく、高齢であるということは、それだけ社会的経験も豊富なはずであるが情報技術の発展スピードが物語っている様に変化のスピードが格段に早くなっていること等から過去の経験の蓄積だけでは対処しきれない最近の取引の複雑さがあるといえる。ましてや、はじめから高齢者をカモにしようと近づいてくる悪質な業者には、高齢者の経験的知識が役に立たないような取引を持ちかけてくることも考えられる。このような場面を想定して、日頃から、どのような消費者被害が発生しているかなど、新しい情報を入手し、分析するなど研究しているまたは研究会を開催しお互に研鑚している高齢者がいるだろうか、と考えると、どうしても詐欺的な消費者被害に遭うケースが多いといえる。 ②高齢者は事理弁識能力の低下とともに、体力や気力などの低下という問題を抱えている。たとえば体力の低下の場合は、長時間の交渉には耐え難く、気力の低下は契約を毅然たる態度で拒否することを困難にする。このようなことから業者の長時間の説得に根負けして契約を締結してしまうケースが生じうる。特定商取引法第6条3項(威圧、困惑)では、業者が契約を締結させるために、または、解除等を妨害するために、人を威迫、困惑させることを禁止しているが、実際に契約が締結されてしまった場合には、このような不退去や監禁があったことを立証することはきわめて困難といえる。 また、一人住まいの高齢者などが、出歩くことが少なくなって孤独感を感じるようになると、家を訪ねて話し相手になってくれる訪問営業マンの言うことを無条件に信頼してしまったり、場合によっては、おかしいと思っていても、勧誘を断ることが後ろめたくなったりして、契約を締結してしまうケースも考えられる。 ③高齢者の消費者被害は、報告される件数はともかく、被害金額が大きいのが1つの特徴である。高齢者は、退職金や貯蓄など老後に備えてある程度まとまった資産を有している者が多いために1件当たりの被害額が大きくなる傾向をもっている。このようなことから、ひとたび被害に遭えば、定期的に入る年金以外の収入の道がないため、その後の生活は想像に難くない。3.高齢者保護の問題点 ①平成20年に改正された特定商取引法第9条の2の第1項には、日常生活において通常必要とされる回数、期間、分量を超えて商品の販売や役務の提供を行う契約が締結された場合について、この契約の申込みの撤回または解除が認められることになった。しかし、これとても本事例のリフォーム詐欺などは適用が想定される典型的な事例ということになるが、高齢者のみを保護対象とする条項にはなっていない。 高齢者であることを直接の理由として消費者を保護しようという規定は、ほとんどなく、高齢者保護を念頭において作られている制度としては、通常、年齢以外に厳しい要件が課されているケースが多い。例えば本事例のBが被後見人となったように、民法の成年後見制度は、高齢者の消費者被害の抑止に威力を発揮している。しかしながら7 agreeable No.22 april 2012/4