ブックタイトルagreeable 第23号(平成24年7月号)

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概要

agreeable 第23号(平成24年7月号)

 前回は耐震性についてお話しました。2000(平成12年)年、阪神淡路大震災の教訓を反映して建築基準法が大改正されました。これにより、木造住宅の耐震性能は飛躍的に向上しました。なにより、これまで耐力壁をバランスよく配置することと言葉で示されていた耐力壁の偏在による建物のねじれやすさのチェックが、平面の4分割法の導入(平成12年建設省告示1352号)によって、面倒な偏心率計算を行わなくても、具体的に数値で確認されるようになりました。 しかしながら、これらの耐震性能は新築時あるいは設計上の性能に過ぎません。この性能が住宅の寿命にわたって長期に維持されるためには耐久性を発揮するための仕組みと、維持管理すなわち建物を手入れする行為が必要不可欠になります。 木造住宅の耐久性で一番重要なポイントは主要な構造材である木材を湿った環境に放置しないということです。屋根や壁の防水性能を維持して、床下や壁の中の乾燥状態を保つことが求められています。さらに、湿気対策に加えてシロアリに対する備えが求められます。 床下環境の乾燥状態の維持のために、建築基準法施行令第22条は居室の床の高さ及び防湿方法を定めています。これによると、『建物の主要構造を問わず最下階の居室の床が木造である場合における床の高さ及び防湿方法は、次の各号に定めるところによるものでなければならない。ただし、床下をコンクリート、たたきその他これに類する材料で覆う場合及び当該最下階の居室の床の構造が、地面から発生する水蒸気によって腐食しないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、この限りでない。一  床の高さは、直下の地面からその床の上面まで45㎝以上とすること。二  外壁の床下部分には、壁の長さ5m以下ごとに、面積300?以上の換気孔を設け、これにねずみの侵入を防ぐための設備をすること。』となっています。 地面から床を離すことと、床下換気を行って地面からの湿気によって床組みの木材が吸湿することを防ごうとしています。しかしながら、床下の空間の機能に対して大きな認識の誤りがこの施行令第22条にはあります。ただし書きによって、防湿さえできたら床下の空間は不要であるといっているのです。床下部分の構造材や設備などの点検や補修はどのようにするのでしょうか?このことが、住宅の長寿命化に大きな影響を与えているのです。シロアリは乾燥状態でも被害を与えることが知られています。そのようなときに、床下に入ることができないため、被害箇所や進入経路の特定などもできないのです。そのために、適切な防除作業の障害になっています。この床下空間の重要性は、次回に解説の長期優良住宅では必須の条件に設定されているのです。最低レベルの住宅性能を規定する建築基準法がこのようなことでよいのでしょうか?改訂が望まれます。 基礎に設けられる床下換気孔は開口部分が鉄筋で補強されていますが、施工の手間と強度の観点から、開口させずに基礎と土台との間に硬質ゴム、プラスチックや金属板などのプレートを挟む、ねこ土台とか土台下スリット工法と呼ばれる換気方法が急速に普及しています。換気の観点からみると全周囲から空気が出入りすることから、基礎の偶角部の換気不良を防ぐことが可能になりました。しかしながら、実際の建物では、ねずみとか虫が入り込まないようにネットが設置されます。さらに、この部分に外壁の水切り板が被って埃がたまりやすくなっています。従って、定期的に清掃して通気を確保しないと換気不良が発生する危険性があります。また、土台との間の隙間がしろありの侵入を防ぐことができると言われたりしますが、しろありは簡単に蟻道を構築することから防蟻効果はまったく認められません(図1参照)。 土台や柱などの構造材が壁の中に隠れるモルタル外壁などの大壁構造が一般的になって、壁の中の構造体が吸湿によって腐朽しやすくなりました。そこで、建築基準法施行令第49条は外壁内部等の防腐措置等を規定して、『木造の外壁のうち、鉄網モルタル塗りその他軸組が腐りやすい構造である部分の下地には、防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。』としています。 しろありに対する措置は建設省(当時)監修木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針に木材処理と土壌処理の必要な地域が定められています。しかし大阪市立大学生活科学部 土井 正建築の知識第三回頑丈で長持ちする木造住宅木の住まいagreeable No.23 july 2012/7 4