ブックタイトルagreeable 第24号(平成24年10月号)

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概要

agreeable 第24号(平成24年10月号)

十分な被害防止対策がとられない場合、数十年後には米国のような状況に陥る可能性が十分にあると筆者は懸念しています。アメリカカンザイシロアリの予防 住宅をシロアリ被害から護るためには、まず予防措置が重要です。現在のシロアリ予防対策はイエシロアリやヤマトシロアリが地下から住宅に侵入するのを防ぐことを目的としています。つまり、屋根裏など住宅の上部で多いアメリカカンザイシロアリ被害に対しては全く無防備な状況となっているのです。 アメリカカンザイシロアリ予防対策として考えられる方法には2つあります。一つ目は、すべての木質系部材に薬剤処理を行うことです。二つ目は、羽アリが絶対侵入できない住宅の仕組みをつくることです。どちらがより現実的でしょうか?本誌に「木材の知識」を連載されている森林総合研究所の大村和香子博士の研究によれば、現在流通している加圧注入処理材はアメリカカンザイシロアリに対しても予防効果があるとのことです。また、九州南部などイエシロアリ被害の激しい地域では、すべての木質構造部材に予防処理を施す場合も多いと聞きます。したがって、住宅の木質系構造部材に対する全面的な予防処理の実施については、技術的にも社会的にも問題はないと考えられます。ただ、残念ながらアメリカカンザイシロアリに対する予防処理に関しては、現在のところ試験方法や性能基準がまだ策定されていません。早急に取り組む必要があるでしょう。アメリカカンザイシロアリの駆除 被害の本場米国では、年間20万件ものガス天幕燻蒸処理がアメリカカンザイシロアリ駆除対策として行われています。定期的なガス燻蒸を行うことによって、もし被害が発生したとしても初期段階で食い止めることができます。しかし、日本、特に都会の住宅密集地で天幕燻蒸を行うことは非常に困難です。(社)日本しろあり対策協会では、アメリカカンザイシロアリの駆除処理を、登録されている10製剤を使って以下のような流れで行うことを定めています。・探知機器なども活用した詳細な被害調査・きめ細かな穿孔注入処理と清掃によるフンの除去・定期的な調査による再処理箇所の把握と再施工 いずれにしても、大変な労力が必要とされる作業です。技術的には十分可能であるとしても、ビジネスとしてきちんと成り立つかどうかが今後の駆除対策の鍵だと思います。さらに付け加えると、羽アリによる被害の拡大を防止するための対策、すなわち羽アリ発生時期を狙った駆除処理も検討する価値があると考えられます。シロアリをもっと勉強したい方へ 4回の連載で、シロアリという虫の生き方やその生態系における役割、そしてその能力を人間社会に活かす取り組みについて紹介しました。日本におけるシロアリ研究は、質、量とも世界のトップレベルにあります。シロアリについてもっと勉強したいと思われる方は、今秋に発行される「シロアリの事典」(海青社)をご一読されることをお薦めします。写真 アメリカカンザイシロアリ被害住宅における屋根裏の様子と被害材から取り出したコロニーおよびペレットの拡大(各個体の体長は1㎝前後、ペレットの長さは約1㎜)3 agreeable No.24 october 2012/10