ブックタイトルagreeable 第32号(平成26年10月号)

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概要

agreeable 第32号(平成26年10月号)

留するので、ぼそぼそと繊維状に崩れることが多いです。白色腐朽菌の仲間には、カワラタケ、スエヒロタケなど、公園や森林でよく見られるキノコの他に、ヒラタケ、シイタケなど食用の菌も含まれます。リグニンを分解する酵素にはリグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼなど、いくつか種類があることが知られています。これらの酵素はリグニン以外の分子でも、部分的に類似構造があれば分解することがあるので、環境浄化などの場面での利用の可能性が、盛んに研究されています。褐色腐朽菌 褐色腐朽菌は、セルロース、ヘミセルロースを分解する酵素を生産します。もとは白色腐朽菌のようにリグニンもセルロースも分解できる菌の仲間が、進化の過程でリグニン分解酵素を失ったものと考えられています(1)。褐色腐朽菌の仲間には、イドタケ、ナミダタケ、マツオウジなどが含まれます。針葉樹を好むものが多いので、木造建築の重要な害菌とされています。ナミダタケは、木材成分を分解した結果生じた水を菌糸から涙のように流すことからその名がつけられました。腐朽力が強く、乾燥した木材でも生育することができる特徴があります。褐色腐朽菌はセルロースを分解するので、木材の繊維が分断されたような亀裂が生じます(図3)。軟腐朽菌 軟腐朽菌は担子菌類ではなく子のう菌類(カビと呼ばれる)に属します。子のう菌の多くは木材腐朽に関係しませんが、一部の軟腐朽菌はセルロース、ヘミセルロースを分解することができます。軟腐朽菌にはケダマカビ、トリコデルマなどがあげられます。屋外で用いられる木製の電柱や杭など地際、住宅の水回りなどで軟腐朽が発生します。木材表面で腐朽が起こり、材が黒色に変化していきます。木材が柔らかくなるので、軟腐朽と呼ばれます。担子菌類が弱酸性を好むのに対し軟腐朽菌はアルカリ性にも強く、また幅広い温度帯で生育可能です。 木材腐朽は生物である菌類が原因であるので、栄養、水分、空気(酸素)、温度、pH などの環境条件が影響します。栄養に関しては、主な栄養源である木材成分は炭素源として菌類に利用されます。その他に窒素源となる栄養が必要で、土壌や埃、汚染などから供給されると予想されるので、供給条件も注意する必要があります。水は最も重要視するべき条件で、土壌との接触、水漏れ、雨水の侵入が菌の生育を許容してしまいます。木造建築において腐朽被害を防ぐためには、薬剤による制御のみならず、菌類の生育条件を勘案して対策を講じる必要があると考えられます。図3 屋外の木材上に発生したスエヒロタケ図4 褐色腐朽の例(1)Science 336(6089):1715-1719, 2012.3 agreeable No.32 October 2014/10