ブックタイトルagreeable 第35号(平成27年7月号)

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概要

agreeable 第35号(平成27年7月号)

●超音波によるシロアリ熱殺虫(3)(4)(5)前述の超音波シロアリ検出器は、シロアリの摂食行動時に発生する超音波を拾って探知するものでした。こちらは、超音波の振動により熱を発生させ、それにより木材中に生息するシロアリを熱殺虫する物理的殺虫器です。超音波は木材中を伝搬する際に振動エネルギーを生み出しますが、それが熱エネルギーに変換されることをうまく利用したものです。液剤による穿孔注入では、柱や壁等の建築材料に穴をあける必要があり、多少なりとも家屋に傷をつけてしまうことになります。また、薬剤を使用することから、お住まいの方の健康や環境への配慮は最低限必要となります。しかし、この装置では木材の形状を損なうことなく駆除できるだけでなく、ノンケミカルで環境的にも安全であるため積極的な駆除が可能です。木材中に潜んでいる害虫を木材の形状を損なうことなく駆除する方法は、燻蒸などが一般的だと思いますが、その危険性や手軽にできない面などを考えると簡単な選択肢ではありません。この方式であれば家屋害虫の対策だけでなく、検疫で問題となっている輸入木材に侵入する外来性木材害虫の解決にも大いに役立つと考えられます。この装置では写真2のような超音波放射用のホーン(振幅拡大器)が用いられます。超音波振動を気体以外に伝播するにはこのホーンが必要で、振幅の非常に小さい超音波振動子の振幅を拡大し、さらに放射面積を縮小することによりエネルギーを集中させる工夫がなされています。都市有害生物管理学会が開催した第27回IPM基礎講座(20 1 5)では26kHz、38kHz用のエクスポネンシャルホーンを製作し、5㎏の荷重をホーンに加えて駆動した例が報告されていました(写真3)。写真からも読み取れるように食害されている部分の温度変化が顕著に表れています。日本で問題となっているヤマトシロアリやイエシロアリ、アメリカカンザイシロアリなどの熱による死滅温度については、大半が45℃前後、30分以上で有効のようです。気になる本機の加熱温度は、試験結果によると50℃以上になることも確認されていることから効力としても十分のようです。温度分布の特徴では、食害された部分(空洞)に沿って温度が顕著に上昇することから、より効果的な殺虫が期待できそうです。また、放射される超音波は鋭い指向性を持つことから、特定の方向に放射することができます。つまり、加熱したいところだけ(=駆除したいところ)を局所的に処理することができます。課題としては、実際に木材へ使用する際にシロアリの明確な位置がわからないこと、表面の温度変化だけで内部の様子がわからないことなどを挙げられていました。また、シロアリのようにある程度俊敏に移動する昆虫の場合、温度変化に気づき、加温箇所から逃げてしまう可能性が考えられることから、これらの問題に関しては今後の検討されることと思います。一方で使い方次第では、昨今、建材害虫として問題になっているヒラタキクイムシやケブカシバンムシなどの幼虫は、加害木材中であまり俊敏に移動できないはずなので、これらの害虫に対する駆除に活用できるのではと感じました。今後の研究、開発に期待したいものです。写真3 アメリカカンザイシロアリに食害された板、丸太に超音波を放射する例。26kHz系は電気入力25W、38kHz系は9Wで3分間駆動し、超音波放射中の木材の温度変化をサーモグラフィーで測定したもの。写真2 ホーンの形状と種類引用・参考文献(1) 超音波シロアリ検出器(TD-15)操作説明書2015:株式会社KJTD(2) マイクロホン式シロアリ検出器を用いた既存住宅のシロアリ検査ガイドライン(案)2015:一般社団法人日本非破壊検査工業会(3) 鈴木圭ら、2010。周波数の変化による木材への協力超音波照射について:日本大学生産工学部第43回学術講演会(4) 張博ら、2014。超音波エネルギーを利用したシロアリ駆除に関する研究:都市有害生物管理学会第35回大会講演要旨(5) 大塚哲郎、2015。超音波応用技術の紹介─シロアリ、カラス、クマネズミの対処─:都市有害生物管理学会第27回IPM 基礎講座講演要旨5 agreeable No.35 July 2015/7