空き家対策について空き家対策法空き家の現状法律に基づく施策、予算・税制措置「空家等対策の推進に関する特「特定空家等」への指導、勧告、「適切な管理が行われていない空キーワードは「放置」です。別措置法(空家対策法)」が施行されて4年が経過しました。この間にも「放置」といえる空き家は増加を続けています。国土交通省によると、これに伴ってプレイヤー(実施主体)である市町村の同法施行状況(活用状況)も確実に増えています。それだけ空き家対策は市町村にとって深刻な案件になっていることがうかがわれます。法律にうたわれている「空家等対策計画」は、義務化ではありませんが今年3月末時点の調査で全自治体の60%、1051市区町村が策定済みとなっています。法律で規定されている危険性等を伴う命令、代執行も徐々に増えてきています。法律のガイドラインでシロアリ対策(蟻害対策)にも触れられている空き家対策の概要、現状などを紹介します。空き家対策法は2014年11月公布、2015年2月施行されました。第1条では背景として、き家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空き家等の活用のための対策が必要」としています。空き家が市区町村の深刻な案件になっていることがこの法律の条文からもわかります。空き家の定義について第2条で次のように書かれています。 「『空家等』 とは、建築物又はこれに付属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着するものを含む)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く」現在、空き家は全国で約846万戸(2018年)です。この空き家の種類は大きく4つに分類されます。1つ目は別荘などの「二次的住宅」(18年の戸数の4・5%)、2つ目は「賃貸用の住宅」(同50・9%)、3つ目は「売却用の住宅」(同3・5%)、4つ目が「その他の住宅」(同41・1%)。市町村が頭を悩ませているのが4つ目のその他の住宅になります。法律ではその他の住宅の中で危険など4つの状態にある空き家を「特定空家等」と規定しています。4つは①倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態②著しく衛生上有害となる恐れのある状態③適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態︱になります。法律は主にこの特定空家等をターゲットにしており、周辺への安全、衛生などの4つが損なわれないよう、市区町村が空き家対策計画に基づいて、対象となる空き家の除却、修繕ほかについての助言・指導、勧告、命令、代執行ができます。シロアリ対策がかかわってくるのは、4つの状態のうち①の保安上危険となる恐れのある状態で、法律のガイドラインの別紙の事例の一つに助言や命令をする際の調査項目の基準として、「腐食又は蟻害によって土台に大きな断面欠損が発生しているか否か、基礎と土台に大きなずれが発生しているか否かなどを基に総合的に判断する」と記載されています。こうした場面においては、日本しろあり対策協会の蟻害腐朽検査士の積極的な活用を呼びかけていくことも必要となってくるでしょう。総務省が5年に1度実施している住宅・土地統計調査の最新の2018年のデータによると、空き家の総数は、20年前の1988年と比べ1・5倍に増加しています。このうち賃貸用または売却用の住宅などを除いたその他の住宅が1・9倍にも増えています。この調査では都道府県別のその他空き家の全住宅ストックに対する割合も算出しており、全国平均が5・6%だったのに対して、最も高かったのが高知県の12・7%。次いで、鹿児島県の11・9%、和歌山県の11・2%、島根県の10・5%などと続きます。空き家には、引き続き住宅として使えるものから廃屋に近いものまで、戸建て、共同住宅など多様なものがあります。問題となる物件は住宅だけでなく、店舗や事務所、倉庫の場合も少なくありません。想定される問題の事例としては、防災性の低下、防犯性の低下、ごみの不法投棄、衛生の悪化、悪臭の発生、風景・景観の悪化など多岐に渡っています。国交省では、特定空家等について、自らあるいは他人であっても使う意思が明確になっていないもの、極論をすると放置状態になっているものとしています。確実に増加している空き家は、相続放棄を含む相続人がいないもの、身寄りがないものと同時に会社の整理・清算によるものが目立っているといえます。空き家法に基づく施策については、国土交通大臣及び総務大臣は空家等に関する施策の基本指針を策定し、市町村はこの指針に基づいて空き家等対策計画を策定、協議会を設置します。都道府県は、市町村に対して技術的な助言、市町村相互間の連絡日刊建設通信新聞社 津川 学 8agreeable No.52 October 2019/10木造建築物の現状とこれから第3回空き家対策法とその展開
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