agreeable 第52号(令和元年10月号)
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読者からの投稿wwweecs.harvardedu/ssr/projects/本誌は(公社)日本しろあり対策協会というシロアリ防除に関して啓蒙普及する団体の冊子です。そして協会が普及啓蒙していること、それはありていに言うと、建築物に侵入する場合に限って、一般の方々の住宅も含め、その保護、そして深い意味では木質資源の保存・保護です。そしてその目的を、日々シロアリをやっつけることで達成していきましょう…ということです。しかし、こういった目的論から入ると、ともすれば、人間側にたった視点だけで物事を語りがちです。本来シロアリという昆虫は、地球生態系にしっかりと組み込まれながら、過去から連綿と進化してきた生物で、やっつける対象でもなんでもありません。ですので、時には、本来のシロアリそのものがどのような役割を果たしているかを考えてみることが必要だと思います。一寸の虫にも五分の魂…なんて言いますが、魂があるかどうかは別としても、シロアリもしっかりとした役割があり、また、その生活様式は人類にひけを取らない高度な仕組みのもとでなりたっています。私は業界に入ってからシロアリの勉強をしましたが、その仕組みのうち、誰もが良く言うし、生物学的にもよく言われるのが、シロアリは高度な社会性を有する昆虫ということです。シロアリの社会性に関して、先日、漫然とネットサーフィンをしていたところ、若干古い記事ですが、面白い記事を見つけました。記事のタイトルは「自分で判断してcons/termes.htmに詳細があります。シ行動する「シロアリロボット」の開発がハーバード大で進行中」というものです。ハーバード大学の研究で、詳しくはhttp://ロアリとロボット??ということで、とかく業界に身を置いているとアナログになりがちな中、そこへロボットという単語が結びついていたので、飛びついてしまいました。とても面白い取り組みです。ここで、皆様がよくご存じのシロアリの生態を引用しつつ、記事の中身を、私なりに紹介します。防除会社の皆さんはよくご経験されると  l.. おいて、この蟻道の修理、誰が指揮してい思いますが、イエシロアリの駆除の際に蟻道を壊すと、兵蟻が出てきて、「なんだなんだ!」と怒りをあらわにして(私にはそう見えます)、乳液状のものを出して威嚇してきます。指でも近づけようものなら、ガブっときますね。その間、同時に職蟻がわらわらと湧き出るように出てきて、口にくわえた小さな土くれで蟻道の修理を始めます。数時間後には、あれよあれよという感じで蟻道がふさがれるのは周知のとおりです。さて、ここで、質問。人間ならば土木会社があって、社長がいて、社員がいて、その中に現場監督がいて、その方が現場の指揮をとります。一方、シロアリの社会にるんでしょう?シロアリのコロニーも高度な社会性を持った階級社会(役割分担もしっかりとあります)。頂点は生殖階級の女王と王。でも、蟻道の崩壊のような末端の事件に関して、女王がそれを察知して「修理しなさい!」って命令でも出すんでしょうか?それとも、蟻道が壊された近くに、臨時現場監督でもいて、壊されたとたんに修繕工事の指揮を始めるのでしょうか?答えは、少なくとも私の理解では否やです。そんな役回りっぽいそぶりを見せている個体なんかみたことありません。では、どうして、そのような行動をシロアリはとれるのでしょう?人間のように個々の存在が自我・意識をもち、能動的に考えて物事を把握し判断しているとも思えません。ではなぜか?ここではちょっと専門用語になりますが、スティグマージーという仕組みが働いています。定義は「フェロモン追跡の利用とその自己組織化能力(昆虫等の群れの知能)による行動パターン」と言われます。難しい定義、何がなんだかわかりません。私なりに解釈すれば、まず、個々のシロアリ個体の動きや役割はシンプルで、ほぼ決まったものであり、また個々の個体が思考することもないでしょう。事前に組み込まれているシンプルな行動パターンが自動的に起動され、実行されるだけです。ところが、それが集合した集団の動きになると、ここでの目的、つまり蟻道の本来あるべき姿(しっかりふさがれて、シロアリにとって安全・安定な環境)に向かって、全体ではまるで、一つの生き物のように作業が実行されます。しかも、途中の過程におけるバイエルクロップサイエンス株式会社 大嶽 譲治18agreeable No.52 October 2019/10シロアリってすごいですね

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