蟻害・腐朽対応の最前線から宮崎県しろあり対策協会では、公益社団法人日本しろあり対策協会、九州しろあり対策協会より業務委託を受けて、平成26年度より6件の文化財蟻害・腐朽検査を行っております。平成26年度には、宮崎市高岡町の二見家住宅、宮崎市清武町の安井息軒旧宅の2件、平成27年度には、日向市の旧高鍋屋旅館及び付属屋と関本勘兵衛家住宅の2件、平成28年度には、串間市の旧吉松家住宅1件、平成29年度には、綾町の旧清水家住宅1件の検査を実施いたしました。その中で、シロアリの被害や湿気による腐れ等が多く確認できた2件、串間市の旧吉松家住宅、綾町の旧清水家住宅について報告いたします。串間市の旧吉松家住宅は、1919年(大正8年)に上棟した建築物で、当時最高の建築技術と高質建材が、当時のまま欠けることなく現存している点が評価され、2008年(平成20年)12月2日に国指定重要文化財に指定されました。検査実施前に、協会員の方から、「数十年前に駆除、予防工事を行った。」と、報告を頂いておりましたが、年数からすると新しいシロアリの集団が繁殖を始めていてもおかしくはない、そう考えながら検査を実施いたしました。シロアリによる食害痕、湿気による腐れ等は多数発見されましたが、シロアリ自体は確認できませんでした。ヤマトシロアリの食害痕でした。前回の駆除後、建物内部でシロアリが新しく繁殖を始めた様子はありませんでしたが、建物外部、床下付近に置かれた不要木材にてヤマトシロアリの生息が確認できました。不要であれば早めに撤去するべきだと考えます。建物の構造(写真1)上、床下に湿気が溜まりやすく、シロアリや害虫が容易く侵入できる状態です。現在、建物内部ではシロアリの生息は確認できませんが、周囲でシロアリの生息が確認されたため、今後建物を守るためには早めの予防工事を行うことが大切だと感じました。綾町の旧清水家住宅は、「酒泉の杜」という焼酎醸造元の観光施設内に所在し、元々は隣町である高岡町の中心部に所在した商家建築です。当時、県下最大規模の主屋で焼酎の醸造を行っていたそうで14agreeable No.54 April 2020/4旧吉松家住宅外観宮崎県しろあり対策協会青年部「白青会」 写真1第7回宮崎県しろあり対策協会文化財蟻害・腐朽調査について部長 山川 雄児/副部長 上村 淳/金丸 友樹
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