元九州大学名誉教授で旧社団法人日本しろあり対策協会の副会長を歴任された森本桂先生が令和元年9月3日午前11時40分にご逝去されました。享年85歳。森本先生は昭和9年(1934年)に高知県で誕生されました。第2次世界大戦中、戦後の混乱期を乗り切り昭和27年(1952年)に九州大学農学部に入学されて以来昆虫学の研究一筋に貫いた人生でありました。特に甲虫の分類の分野では優れた経験と豊富な知識を習得され多くの教え子を育成されてきました。九州大学を卒業後昭和36年(1961年)に農林省の熊本林業試験場に赴任されました。当初シロアリは専門外でしたが林業試験場で当時の上司の方から「シロアリをやれ」と言われたのがきっかけでシロアリ研究をされたと聞きました。それがシロアリ業界に首を突っ込んだ理由だとにこにこしながらお話しされていたことを覚えています。林業試験場に在籍されていた折には松くい虫の研究もなされ松枯れの原因究明の研究結果を発表されました。その研究をもとに全国的な松枯れ対策が実施されたと聞いております。 では大変著名な方であることは間違いあり州大学農学部昆虫学教室に助教授として着任され、平成5年(1993年)に退官されるまで研究一筋の毎日でした。退官後も九州大学の中で意欲的に研究を続けていらっしゃいました。森本先生はシロアリ業界ませんが、本来の研究対象は「ゾウムシ」の分類でした。ご存じない方もいらっしゃるのではないかと思います。しかしシロアリ業界では言うまでもなくシロアリの生態・分類において業界の発展に大きな功績をあげられました。平成9年(1997年)から公益社団法人日本しろあり対策協会の前身である社団法人日本しろあり対策協会の本部理事として、さらに平して3期6年にわたり本部の運営に参画されました。総務委員会・蟻害腐朽検査制度推進委員会・乾材シロアリ対策委員会・薬剤等認定委員会等多くの委員会の運営に携わっておられました。特に平成9年から平わたり「しろあり防除施工士」の講習会の講師や問題作成、採点、テキストの作成等にも中心的な役割を果たしてこられました。日本しろあり対策協会の事業に深くかかわりを持ち精力的に実務を果たしてこられたのは周知の事と思われます。協会の行事では本部総会、全国大会や九州総会においても積極的に参加していただいて常に協会の活動に尽力された方でした。また、社団法人日本しろあり対策協会50周年記念誌の編纂においても中心的な役割を担っておられました。日本しろあり対策協会の機関紙「しろあり」にはNo.2号(1968年3月)から研究成果を何度もご投稿いただいています。本協会は平成25年(2013年)1月に成15年(2003年)からは本部副会長と成24年にかけて資格検定委員として長期に社団法人から公益社団法人へ改組いたしましたが、本部副会長を退任されても現在の九州しろあり対策協会の会長として、また一般社団法人福岡県しろあり対策協会の顧問として業界の発展に大きく貢献されました。長期にわたり日本しろあり対策協会の発展に豊富な知識と経験で我々を導いていただきましたが、本協会の歴史を知る貴重な方がいなくなりシロアリ業界にとって大きな損失であることに今更ながら残念で仕方ありません。ご葬儀は近親者のみで執り行われたという事ですが、令和元年10月5日に九州大学箱崎キャンパス内で「森本先生を偲ぶ会」(昆虫学教室主催)が開催されました。追悼文を読み上げる方の中には号泣されて言葉に詰まる場面もありました。いかに研究者仲間や教え子たちから慕われていたことかよくわかる出来事でした。森本先生に初めてお会いしたのは40年近く前のことです。温和な語り口でお話をされ、些細な事でもお尋ねすると真剣に答えていただき、ご指導していただきました。懇親会等でお酒を飲むときでもゾウムシの話はほとんど話されたことはありませんでした。我々に対しては常にシロアリの研究者でありました。森本桂先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。 合掌インターネット検索より一部引用*1昭和53年(1978年)に、先生は九九州しろあり対策協会常務理事 吉野 弘章19agreeable No.54 April 2020/4*1 森本桂先生のご逝去を悼む
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