予防駆除剤の防腐性能評価・軟腐朽菌(なんふきゅうきん)・防腐性能試験・試験体の準備・耐候操作では抗菌操作と呼ぶ)9agreeable No.55 July 2020/7itopsis palustrisetes versicolor・ 腐朽試験(JIS K 1571(Fom木材を黒く、スポンジ状に腐朽させる軟腐朽を引き起こす菌類を軟腐朽菌と呼びます。キノコではなく、カビの仲間であるケタマカビといわれるケトミウムやトリコデルマ属など子のう菌類によって生じます。主にセルロース及びヘミセルロースを分解しますが、リグニンを分解するものもいます。他の腐朽菌と異なり、高含水率の木材を分解できます。予防駆除剤の性能は、日本産業規格JISK1571:2010「木材保存剤−性能基準及びその試験方法」により評価し、木材腐朽菌に対する防腐性能(室内)、イエシロアリに対する防蟻性能(室内試験、野外試験)、鉄腐食性能試験に合格した薬剤が、日本しろあり対策協会で予防駆除剤として認められます。(表面処理剤である予防駆除剤は、防腐性能に関する野外試験はありません。)防蟻性能評価については、別の機会とさせていただき、今回は腐朽菌に関連するJISK1571による防腐性能評価について概要をご紹介します。防腐性能試験は、薬剤処理した試験体(スギ辺材)を、褐色腐朽菌:オオウズラタケカワラタケ(Tram曝露し、腐朽が生じるか、生じないかで薬剤の性能評価を行います。このオオウズラタケは、なんと約90年前(1928年)に東京で、カワラタケは70年前(1949年)に静岡で採取された菌株です。自然界では、この2種類の菌だけが、腐朽を引き起こすわけではありませんが、両種は高い腐朽力や、生育の早さなど試験に適した性質を持ち、昔から長く使われていることから試験菌として重用されています。防腐性能試験ではスギ辺材(幅20㎜×長さ40㎜×厚み5㎜)を用います。試験薬剤を指定の濃度に希釈し、このスギ辺材の表面に1㎡あたり110gとなるように塗布もしくは浸漬処理により吸収させます。これを7)、白色腐朽菌:)に(抗菌操作)に供します。 日間乾燥し、試験体とします。薬剤効力が長期間保持されるかを確認する為に、加速操作として耐候操作を実施します。薬剤処理した試験体を25℃の水に5時間浸せきし、薬剤を溶脱させます。続いて温度40℃の乾燥器中に19時間静置し、揮発分を揮散させます。この作業を交互に10回繰り返します。薬剤の種類にもよりますが、耐候操作により薬剤が流れ落ちますので、薬剤としてはかなり苛酷な条件で試験をする事になります。耐候操作の後、試験体の乾燥重量を測定し、ガス滅菌により無菌状態にした試験体を腐朽試験抗菌操作は、ガラス瓶に海砂と菌の生育に適した液体培地を入れ、そこにオオウズラタケ及びカワラタケを、それぞれ無菌的に接種し、26℃で2週間ほど培養します。そうすると、培地上に腐朽菌の菌糸が蔓延します。この菌糸上に、プラスチックの枠で固定した試験体を置きます。12週間、この状態で静置し、試験体を腐朽菌に曝露します(写真4)。曝露終了後、試験体の腐朽程度を質量減少率から求めます。薬剤処理試験体の質量減少率が3%以下の場合に、薬剤の防腐効力があると認められます。試験の有効性は、薬剤無処理の試験体を同時に評価し、その平均質量減少率が、オオウズラタケの場合は30%未満、カワラタケの場合は15%未満のときに再試験を実施する必要があります。大変手間のかかる試験で、腐朽菌の維持や、培養の仕方・試験体の投入タイミングや、通気状態などコツが必要です。思ったように無処理材が腐朽をしないなど、熟練を要する試験です。準備から結果がでるまでに時間がかかりますので、再試験となると大変です。研究者泣かせの試験でもあります。写真4 12週間経過後の腐朽試験容器(左:オオウズラタケ、右:カワラタケ)写真3 オウシュウアカマツ材に発生したカビと腐朽菌(緑はカビ:Trichoderma属、白は種類不明の木材腐朽菌)
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