agreeable 第57号(令和3年1月号)
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土台外壁まわり            4耐久性各論の中編では土台、外壁まわり、浴室及び脱衣室、台所その他、水を使用する箇所について解説します。土台は木造建築物の構造躯体で最下部にあり、床下湿気や雨だれの跳上りの影響を受けやすい環境にあることから、腐朽や蟻害を最も受け易く、被害程度も大きくなります。そのため、防腐・防蟻措置として、防腐・防蟻処理の適用区分(本シリーズ第2回目参照)に従って、加圧注入処理木材等を用いるか、ヒノキ、ヒバなどの耐久性の高い樹種の心材に塗布や吹付によって薬剤により表面処理を行うものとしています。加圧注入処理木材等というのは、単に薬剤を木材に加圧注入した材をいうのではなく、製材のJAS等が定める品質をもった加圧注入処理木材をいいます。加圧注入処理を施したものであっても木材の全断面に薬剤が浸潤しているわけではありません。そのため、建築現場で加圧注入処理材に切断や穴開け加工を行った場合、薬剤が浸透していない部分が露出することになります。木材の外表部から一定の厚みの薬剤バリヤーによって、腐朽菌やシロアリ等の外部からの侵入を防ぐという保存処理の観点からすれば、この薬剤未浸潤部分の露出は、防腐・防蟻性能の最も脆弱な部分といえます。そこで、建築現場で切断や穴開け加工を行った場合には、必ずその部分に対して所定の薬剤を用いて、塗布や吹付け法によって入念に処理することが大切です。建築現場等で土台表面に薬剤を用いて防腐・防蟻処理しようとする場合に、土台に使用できる樹種は、ヒノキ、ヒバなどの耐久性のあるものを用いて塗布あるいは吹付け処理を行います。土台には耐腐朽性だけでなく耐蟻性の高いものが求められ、ヒノキ、ヒバ、ベイヒ、ベイヒバ、クリ、ケヤキ、ベイスギ(=ウェスタンレッドシーダー)等を用いた製材(心材に限る)か、若しくはこれらの樹種の心材を使用した構造用集成材等が採用されます。また、木材の耐腐朽性、耐蟻性はどの樹種であっても心材にあるため、上記の樹種であっても辺材が含まれる場合は防腐・防蟻処理を行う必要があります。外壁は屋根と同様、風雨、日照などに曝されて自然条件の厳しい環境に置かれています。そのため、劣化を防ぐには外壁、窓、出入口などを含む外壁回りの構造、材料の選択、各部の納まりを通じて構造部材に漏水が生じないよう防水に十分配慮した施工に努めるとともに、雨水等の浸入があっても、速やかに乾燥、水分の排出ができる構造上の措置が必要となります。そのため、外周壁内に通気層を設けて壁体内通気を可能とする構造とします(図1)。また、軒の出が90㎝以上あって外周壁下部の雨濡れが抑制でき、かつ柱が直接外気に接して乾燥状態を維持しやすい真壁構造も通気工法と同等の効果があるされます。壁体内通気工法では通気層の室内側に一般的に透湿防水シートが設置されます。その際、防腐・防蟻処理後の雨水養生に不具合があると、薬剤に含まれる界面活性剤やシートの種類によっては、シートの撥水効果が低下することがあるので注意が必要です。防腐・防蟻処理の対象となる木材は、軸組を構成する通し柱、管柱、間柱、筋かいや構造用合板などの耐力面材及び下地となる貫板及び胴縁類で、基礎天端から1m以内の範囲です。表面処理を行う場合で土台に加圧注入処理材を選択している場合は、性能的には土台の木口、ほぞ及びほぞ穴等、現場加工部分以外は塗布する必要はありません。しかしながら、土台の養生等余分な手間となるため、わざわざ表面処理の対象から除外する必要はありません。また、室内側が真壁造の場合は、室内の見えがかり部分の処理は行わないことになっています。外壁面から壁体内への漏水は、通常外壁仕上げ材の接合部、外壁と開口部材との取り合い部に起こります。最近の住宅は敷地の制約や意匠上の理由から軒の出が浅く、開口部上部にひさしを設けないことが多くなっていることから、窓、出入口回りに対して雨掛りが激しくなり、開口部まわりの外壁の耐久性を低下させています。漏水により窓枠材が腐朽すると、隣接する構造材に被害が拡大するおそれがあるため、窓サッシまわりの第4回元大阪市立大学 土井 正agreeable No.57 January 2021/1「木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針・同解説」について建築工法、材料等の技術的変化に対応した耐久設計各論(中編)

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