agreeable 第57号(令和3年1月号)
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人為的な交雑市販昆虫の交雑自然界での交雑シロアリの交雑学名にも記されている生息地 fuscataril., J ilCoptoterCoptoterformosanuses formosanuses gestroi. gestroi., et al., ICoptoteres formosanus川西ら,Res., 1999]Appl EcoEvoApp昆,l., 2015]。最近では、古ら,l. l, 2020]。mate odránl., J. . Econ. l., l., 2019]。Entomotechヒトは古くから生き物の特性をうまく引き出すために、生き物同士をかけ合わせて(交配や交雑して)、求めている性質を強く持つ生き物を見出してきました。例えば、ラバは紀元前から農耕や輸送に活躍してきましたが、雄のロバと雌のウマの交雑により生まれた交雑種です。生糸を作り出すカイコは、野外に生息するクワコを祖先として人為的に改変された動物のひとつですや鶏といった家畜においても積極的に交雑種が扱われてきましたし、タイなどの魚類においても交雑が行われてきました。植物まで含めると(交配という)、人間は、無数の雑種を作り上げてきたのです。夏になると子どもたちのあこがれの眼差しが注がれる、クワガタ。日本国内でも、外国産のクワガタが販売されていることは珍しく有りません。もし外国産のクワガタと国産のクワガタで異なる種のものが交雑できるならば、飼育下から脱走した個, 2008]。牛や豚 [   [ 6  mCmm[ P)  体が交雑して繁殖してしまう可能性があります。実際に日本産のヒラタクワガタと、外国産のスマトラオオヒラタクワガタは交雑することができ、生まれた子孫も育つことが実験的に知られています自然界でも、もともと生息域が重なっていなかった生物の分布域の変化に伴い、同じ地域に生息するようになった異種の生物の交雑が心配されています。例えば、日本国内に持ち込まれたタイワンザル(Macaca cyclopisしてニホンザル(Macacaと交雑した例や川本ら,、チュウゴクオオサンショウウオ(Andrias davidianus日本のオオサンショウウオ(京都・鴨川が有名)などが知られていますくからヒトのペットとして飼われてきたネコにおいても、イエネコの雌はヤマネコの雄を好んで交雑する傾向があるという研究結果も報告されています[Quこんな話を聞くと、同種でない 2004]。(Andrias japonicus[Fukumoto et a五箇&小島,環動)が野生化)が)と交雑した例[Su(Homo sapiens)とネアンデルターもの同士が交雑することが悪いように聞こえてしまうかもしれませんが、わたしたち現生人類ル人(Homoneanderthalensisその昔、自然界で交雑したという証拠がDNA解析から見つかったという報告もあります。まだ人類の進化過程についての議論は続いており、確証のない部分もあるものの、私達人間の進化にも交雑は無関係ではなさそうです。さて、交雑が起こる条件には、種の異なる生物が地理的に同所に存在することが必要なことは明白です。日本の南端のお隣さんの台湾の事例を見てみましょう。台湾でもイエシロアリによる建造物への被害は問題となっていますが、イエシロアリに近縁のによる被害も顕著です。台湾南部にはCが、台湾中部と北部にはが分布しているということは、中部で両者の分布が重なっているということになりますた、太平洋を隔てた米国フロリダでもこの二種は同じ地域に重複して分布していることが知られnsects, 2017]。まet aています。両種のシロアリの分散飛行の時期が重なったときには、両者の間に交尾行動が観察されたとのこと。このペアを研究室で)は、育てたところ、ハイブリッドコロニーができたといいます何らかの影響(例えば人為的な移動や温暖化などの気候変動による分布域の変化)によって、もともと異なる地域に生息していて、接触したことのないシロアリ同士が出会った場合、交雑が起こり、これまでに持ち得ない性質を保持したシロアリが誕生する可能性があることを示しています。ところでこれまでこの記事で何度も出てきたイエシロアリの学名が、なんだかよくわからない、知らなくても特に問題にならないアルファベットの文字だなということで、軽く読み飛ばしてきた読者の方もおられることでしょう。せっかくですので、ちょっと頑張って読んでみましょうか。読みをカタカナで記せば、「コプトテルメス・フォルモサーナス」と書いてあります。学名は世界共通で、どの国でも特定Entomo[Pateです第8回agreeable No.57 January 2021/1〜異なる種が交雑するということ〜熊本高等専門学校 生物化学システム工学科・拠点化プロジェクト系 木原 久美子

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