交雑と多様性&進化シロアリすごいぜ!本当に!7agreeable No.57 January 2021/1formosanuの生物を固有に示す唯一の名前として使われています。どこの国でも同じように使える共通の名前なのだと思うと、すこし興味がわきませんか?この学名には意味があるのですが、特にs(フォルモサーナス)は、「台湾の・台湾と中国に自生する」といった意味です。イエシロアリの学名には、わざわざ「台湾のシロアリ」という意味がつけられているのですね。この例のように、学名には、その生物の生息地や発見地などの地理的な条件が由来として記されていることもあります。ちなみにですが、学名ではない「イエシロアリ」という呼び名は、和名といいます。それぞれの国で、生活や文化において身近な生物には、それぞれの国の言語で生き物への名前がつけられており、慣用的に使われています。このように、生き物は同所に 響で、遺伝的な撹乱が急速に起いる者同士の間で、ともすれば種が異なるのに交雑し、新しい交雑種を生み出す生物の性質があります。交雑することで、それぞれの生物が持っている遺伝的な情報が混ざるというところがポイントです。人間活動の影こると、通常ではありえない速さで遺伝子資源が失われたり(在来種の純系が無くなるなど)、予想もしない性質を持つ個体が生まれたりすることがあります(例えばキラービーなど)。その一方で、自然界では人間活動とは別に、交雑や交配によって遺伝子のまぜこぜが起こっていくのだという事実もあります。シロアリでもその可能性があるように、生物はこうして種の多様性を増加させたり、ときには環境により適した性質をもつ種が誕生したりして、生き残る進化を遂げているのです。いま身近にいるシロアリが進化しているとは思えないものですが、私達自身がそうであるように、生物の進化はいつでも起こっているのです。さて今回で、この「シロアリすごいぜ!」は一旦最終回を迎えることになりました。連載開始から2年間のうちに、いくつかのトピックスを季節の移り変わりや時事的な状況に合わせて選んでお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか。軽く斜め読みしていただいて、なにか得られる情報がひとつでもあったなら幸いです。もちろん、たった8つの記事では、シロアリのすごさのすべてを記すことはできないほど、シロアリとシロアリが関係する生き物や環境は、奥深く興味深いものです。シロアリと関わる仕事を続ける中で、シロアリすごいぜ!を実感しながら、また皆さんにお会いできる時を楽しみにしています。図1 タイワンザルとの交雑が可能なニホンザル;(A)ニホンザル個体の一例。ホンドザルとも呼ばれている。写真は千葉県の野生個体。(B)ニホンザルの亜種のヤクシマザルの一例。素人が眺めただけでは違いはほとんどわからないかもしれないが、ヤクシマザルのほうがホンドザルよりも小さめで毛が粗いなどの特徴がある。タイワンザルはこれらよりも尾がかなり長いので区別がつく。図2 ホモ・サピエンスの一例(筆者近影)。西表島でシロアリを見つけてはしゃいでいる様子。シロアリすごいぜ!!(A)(B)
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