昨年七月二八日 岐阜県しろあり対策協会は、海津市教育委員会の依頼により、海津市平田町三郷に在る、国指定重要文化財の『早川家住宅』の蟻害腐朽検査を行いました。早川家住宅は、『おちょぼさん』の愛称で親しまれている千代保稲荷神社の参道沿いの西南に位置し、一四三〇坪の広大な敷地内には、一四五坪の数奇屋造りの主屋と東に土蔵造洋館、西に離れ、北に裏座敷。西ノ庫・土蔵・下男部屋・辰巳隅職人部屋・味噌庫・飯米庫の八棟の建物が建築されています。今回登場する、早川住宅は、木曽三川下流域に所在する、かねてから水害に悩まされてきた地域の豪農の住宅故に、明治二四年の濃尾地震で被災した後に再建されますが、水害対策として石垣で地盤を嵩上し、更に高い石垣上に飯米庫や西ノ庫が建てられ、三年の歳月を掛け明治三七年に主屋や裏座敷など現在ある全体が完成したとの庫です。主屋は木造平屋一部二階建てで、重厚な式台を構えて高い格式を備えていて、数奇屋造りの建物内部は吟味された材料と優れた工芸技術により、室毎に趣向を変え、洗練された建築様相を垣間見ることができます。また、建築構造には独自の耐震対策を施し、大きな梁を斜めにいれて耐震性を強固にされている様です。この様な二百坪程の敷地内建物を、県内の施工会社、五社十人程のしろあり防除施工士が、手分けして全て検査を行いました。前置きは、ここまでにして本題の、『ないようである事例』ですが、蟻害腐朽検査の依頼を受けた物件の調査に入ります。筆者の担当した場所が、今回市の担当者が最も心配した、カッテニワと言われる土間の吹き抜け部分に見える、十字に組まれた大きな梁の蟻害状況です。配布された図面には「十字に組まれた地震梁にひび割れがある」と記載されています。カッテニワは、薄暗くハッキリとは見難いですが、よくよく観察すると、煤で真っ黒に成った梁の所々に、蟻土と思われる明るい茶色の土が見えてきます。今回、写真1で指示された、市職員が感じた注釈の記入箇所のみで、その他の事前情報が無 い状態で、蟻害腐朽状況検査が始まりました。梁に脚立を掛け、割れの生じた地震梁や横梁(有)サンアイ 今瀬 芳尚18agreeable No.59 July 2021/7写真1 市職員が感じた違和感の有る場所を記入した図面十字に組まれた地震梁 割れが生じ隙間が生じて来た第11回ヤッパリ!田口さん!あなたでしたか!ないようである事例
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