はじめに木材腐朽菌の一生きのこ(子実体)子実体の外形子実体の表面観察「おとなのシロアリ自由研究」に(図1)。ベテランの防除施工士皆さんがタイトルを見て感じられたとおり、今回始める「おとなの自由研究―木材腐朽菌―」は長崎大学山田明徳先生のインスパイアされ始めるものです。シロアリの自由研究だけではあきたらず、木材腐朽菌に関するさまざまな事柄についても自分で試してみようと密かに思っている方々が、自分なりの研究への第一歩を踏み出すきっかけになることを目指しております。内容によっては「バケツとゴミ袋」だけではいかんともしがたいところが出てくるかもしれませんが、その辺は無視して話を進めさせていただきます。また、ネタについても走りながら考えているため、この先どうなるかは自分でも分かりません。この冊子を手にしている皆さんはおそらく木材腐朽菌の一生とかライフサイクルという図を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。手元にあるしろあり対策協会のテキストには、福田清春先生が描かれたと思われる図が載っていました 4 の皆さんもおそらくこのような図を見て勉強されたのではないでしょうか。今回はこの図にあるきのこについてお話します。 『きのこ』というとつい食べ物を思い浮かべてしまうため、ここからは少し気取って『子実体』と呼ぶことにします。皆さんはこれまで子実体をさまざまなところで見かけてきたと思います。たとえば芝生の上や林内の土壌、あるいは林内の生木・生枝・倒木、さらには住宅地や公園内の樹木や木製工作物等々、意識的に探すと実はさまざまなところで子実体を見つけることができます。子実体をつくる菌が全て木材腐朽菌というわけではありませんが、子実体が木材『子実体』のうちシイタケを取りにしっかりと食い込んでいれば木材腐朽菌と考えて間違いありません。それでは子実体をよく観察してみましょう。といっても住宅の床下にもぐって子実体を探すのも大変ですし、そもそもよっぽど悪い状態の住宅でなければ子実体など生えていません。そこでここは効率を考え近所のスーパーで手頃なきのこをいくつか調達することにします。今回の自由研究では、財布や観察したあとのことも考えシイタケ、マイタケ、エノキタケを調達しました。さて買ってきた『きのこ』否出し、しっかりと観察してみましょう。どのようなシイタケを買ったのかによりますが、若いシイタケではシイタケがホダ木や菌床にくっついていた部分から棒状の組織が伸びその先に黒柳徹子さんの頭のような形のものがついているはずです。この棒状の部分を『柄』と呼びます。一方、若い子実体が成長するにつれマッシュルームヘアの部分は大きく広がり傘のようになっていきます。この部分を『傘』と呼びます。マイタケ、エノキタケについても、シイタケと形は違うものの、柄と傘を認めることができます。さて、ここで重要となるのが、巻き込んだ髪の内側の部分です。シイタケでは成熟するにつれて傘が大きく開いていきますが、子実体にとってはこの傘が開くというのが大きなポイントとなります。それではシイタケの傘の内側を見てみましょう。成熟した子実体の場合は問題ありませんが、若い子実体の場合には傘の内側に薄い皮膜が被さっているかもしれません(写真2)。もし第1回agreeable No.59 July 2021/7図1 木材腐朽菌の生活環出展:腐朽及び蟻害の検査診断方法写真1 シイタケの外観左下にあるのが「柄」、右上が「傘」おとなの自由研究〜木材腐朽菌〜森林総合研究所 桃原 郁夫
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