agreeable 第60号(令和3年10月号)
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最終残価率 はじめに家屋評価における経年劣化の評価経年減点補正率の課題固定資産税算定のための家屋(=建物)評価は、部分別に設定された再建築費評点基準表を基に評価額を算定する再建築価格方式が採用されています。この再建築価格方式は、直接的な建設費用(工事原価)を基に設定された標準評点数を用いて評価額を算定する建築積算に準じた手法であり、均衡のとれた適正な評価体系として今日まで適宜改良が加えられながら運用されてきました。しかし一方で、木造家屋の評価が非木造家屋に比べて低く設定されていることから、木造家屋は寿命が短く資産価値も低いと誤解されがちな状況を招いています。そこで本稿では、家屋評価の視点から木造家屋の維持管理の必要性を確認します。家屋評価は、まず課税の対象となる家屋        た再建築費評点数を求め、建築されてからと同一のものを評価の時点で新たに建てる場合に必要とされる建築費1円を1点としの年数によって生じる「損耗の状況による減点補正率」と「需給事情による原点補正率(必要がある場合)」を乗じて評点数を算出します。さらに評点数1点を1円に再度変換し、「物価水準による補正率」と「設計管理費等による補正率」を乗じて評点一点当たりの価額を求め、先に出した評点数に乗じて評価額を算出します。なお「損耗の状況による減点補正率」は、経年減点補正率と損耗減点補正率に分かれています。そのうち損耗減点補正率は、天災や火災など特別な事情を考慮するために設定されていますが、経年減点補正率は「通常の維持管理を行うことを前提」に年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎とした補正率です。そのため基本的に既存の家屋評価は、再建築価格方式で求めた建設時の家屋評価に経年減点補正率を乗じて算出されます。また木造家屋の場合、現家屋評価の経年減点補正率は初年度0・80、2年度0・75、3年度0・70という初期減価が設定され、4年度以降は用途別区分及び延べ床面積1・0㎡当たり再建築費評点数の区分別に定額法による減価率が設定されています。なお非木造家屋も木造と同様に経年減点補正率が設定されていますが、初期減価は住宅・アパート用建物にしか設定されていません。ちなみに最終残価率は木造・非木造家屋とも0・20です(図参照)。ここで経年減点補正率の設定に大きな影響を与えている法定耐用年数のなりたちを確認します。法定耐用年数は、効用持続年数(通常の前橋工科大学准教授 堤 洋樹10agreeable No.60 October 2021/10図 現家屋評価の経年減点補正率初期減価率※木造+非木造の住宅 ・アパート用建物 定額法 木造10〜35、非木造13〜65 経過年数 法定耐用年数の影響大 現状の経年減点補正率 経年減点補正率 1.0 0.8 0.2 0 1 家屋評価の手法と維持管理家屋評価から見た木造家屋

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