はじめに失敗の原因を考えるフレッシュな子実体胞子の存在を確認する胞子が飛んでいるところを撮る前回お届けしたおとなの自由研究は、胞子を確認するところに至らず尻切れトンボで終わってしまいました。その顛末についての弁明から始めたいと思います。前回の写真を見てお気づきだった方もおられるかもしれませんが、あのとき使用したシイタケはスーパーで購入した比較的若いシイタケでした。このことは子実体の裏に被膜がついていたことからも推察できると思います。このため、子実体が十分成熟しておらず、胞子を生産するまでにいたっていなかったと考えられます。そのような可能性が考えられたため、前稿では紹介しませんでしたが別のスーパーで購入したもう少し成熟した(傘が開いた)子実体を使って並行して実験をおこなっていました。しかし、こちらの子実体からも胞子が落ちてこず、一方原稿の締切日は刻一刻と迫ってきます。このような事情から前回は「次回の自由研究に譲ります。」と締めくくらせていただきました。前回のリベンジにあたり失敗した原因について考察してみました。スーパーで売っている子実体は新鮮だといっても菌床やほだ木から切り離されてから数日は経過しているはずです。ビニール袋にくるまれ湿度も比較的高い状態に保たれていますが、それでも胞子を飛ばすには乾燥しすぎていた可能性があります。このためスーパーで購入した子実体は、今にも胞子を飛ばそうとギンギンになっているというより、当面の間胞子を飛ばすのを中止し生きながらえる方を優先する半休眠状態に入っていたのかもしれません。そこでまずギンギン状態の子実体を入手することを考えました。困ったときはグーグル君です。さっそく「OKグーグル、ギンギンのシイタケはどこで手に入る?」と質問してみました。「高槻市で一件見つかりました」と教えてくれましたので、グーグルマップに経路を尋ねたところ「府道733号線が一番早く着きます」ということでした。さっそく目的地に向かって出発します。途中Uターンもままならない狭い山道を10㎞ほど直進し、二度とグーグルマップを使うまいと決心したところで目的地に到着です。入り口で受付を済ませテント(ティッシュでも良い)を載せ、(写真3)。このまま、数時間放の中に入るとスーパーのシイタケとはひと味違う今にも胞子を飛ばそうと準備万端整ったたくさんのギンギンシイタケが目に飛び込んできました(写真1)。この中から、肉厚で傘が大きく開いた状態の子実体(写真2)を選び持ち帰ります。胞子の確認法は、前回詳しく書きましたから今回は簡単に説明します。柄の部分を切ってヒダの面が下になるよう黒い紙の上に置きます。シイタケの上に水を含んだキッチンペーパー上からガラス容器をかぶせます置すればOKです。時間になったらそっとシイタケを持ち上げてみましょう。うまくいっていればシイタケの置かれていた部分に、胞子による白い模様(胞子紋と呼びます)が浮かび上がっているはずです(写真4)。また、胞子紋を詳しく観察すると、ヒダに沿って胞子が落ちているのも確認できます(写真5)。胞子がシイタケから落ちてくるのは分かりました。では、胞第2回 6agreeable No.60 October 2021/10写真1 ほだ木から生えた子実体写真3 子実体に胞子を出させているところ写真2 十分に成熟した状態の子実体おとなの自由研究〜木材腐朽菌〜森林総合研究所 桃原 郁夫
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