薬剤を土壌に散布する方法・ 帯状散布における処理量と留ことも重要です。このことは腐朽我が国の主要建築害虫であるヤマトシロアリ及びイエシロアリは地下に生息しており、地中から基礎や床束などを経て建築物内に侵入します。したがって、床下土壌に防蟻薬剤等による防蟻層を構築することが建築物へのシロアリの侵入を阻止し、建築物全体をシロアリ被害から防御する有効な手段となります。このように、床下土壌を薬剤処理するなどして防蟻する方法を土壌処理と呼んでいます。土壌処理法には、土壌に防蟻薬剤を散布する方法とベイト工法または防蟻材料その他による方法とがあります。どのような処理を採用するか検討するにあたっては、敷地の状況、土質などを的確に把握して処理薬剤等の選択、処理方法を決定して、水質汚染などにつながらないよう慎重な対応が必要です。また、土壌処理を実施する前に、床下土壌にある木材片、基礎に付着している仮枠、地面に打ち込んである木片等、シロアリの餌となるものを取り除く害を防ぐためにも有用です。以下に解説する土壌処理法のうち、土壌に薬剤を散布する方法およびベイト工法は、新築、既存にかかわりなく適用できる方法です。防蟻材料その他による方法は、主に新築建築物へ適用する方法ですが、一部は既存建築物にも適用できます。既存建築物の場合には土壌に薬剤を散布する方法で特に留意すべき点があります。このことについては特に項を設けて解説することとします。土壌に散布する方法に用いる薬剤を土壌処理剤と呼び、製剤形態としては液剤、粉剤および粒剤(以下、粒剤等)があります。液剤としては乳剤型のものが多く用いられ、原液を水で指定濃度に希釈して使用します。粒剤等は有効成分(原体)を滑石粉末などの増量剤とともに製剤化したもので、粒径300㎛以上のものを粒剤、45㎛以下のものを粉剤と呼び、これらは所定量をそのまま散布します。土壌処理剤の原体は、木材保存剤と同様に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の規制下にありますが、その製剤である土壌処理剤は規制の対象とされていません。そのため当協会及び日本木材保存協会では、それらの製剤について効力や安全性を評価して認定しています。効力についてはJISに定められた試験法がないため、両協会が制定した土壌処理剤の効力試験法によって評価し、所定の性能を持つことを確認しています。床下土壌面への薬剤の散布方法には、帯状散布と面状散布とがあります(図1)。帯状散布は、防湿措置を施さない床下土壌面に対して行います。基礎の立ち上がり部分や束石の周辺など、シロアリが地面から床下木部に侵入する足掛かりとなる箇所に帯状に散布します。このように、処理範囲を限定しているのは、できるだけ散布する薬剤量を少なくして環境汚染を防止するためです。これに対して、面状散布は防湿措置が施され、防湿シート、土間コンクリートあるいはベタ基礎に覆われる土壌面に行います。この場合、土壌処理剤が生コンクリートの強アルカリによって反応・分解して効力が低下することがあるため、直接接触させないことが重要です。防湿のためのポリエチレンシートは、土壌処理剤とコンクリートとを直接接触させない働きもしているのです(図2)。玄関ポーチ、犬走り等コンクリートで覆われる床下以外の部分についても同様に面状散布を行います。面状散布では処理された土壌を防湿層で覆うことになりますので、処理後の薬剤の揮散を防止したり、床下冠水時に処理された土壌の流失を防止することに繋がり、居住者への影響や環境汚染の防止にも役立ちます。この場合でも基礎立ち上がり部分や束石周辺に対して帯状散布を併用することになっています。薬剤を土壌に直接散布する方法では、雨水等の影響を受けて環境汚染の危険性が高い外周部基礎の外側には薬剤による土壌処理を行わないこととしています。意点:基礎の内側及び束石の周囲並びに配管等の立ち上り部分の土壌に対して、立ち上がり部分の端から約20㎝の幅で液剤や粒剤等の薬剤を土壌の表面に帯状に均一に散布します。液剤の散布量は処理長1m当り1ℓです。粘土質などで液剤が浸透しにくい箇所などは粒剤等を使用し、散布量は液剤の規定量に相当する量とします。粒剤等を使用した場合、防蟻層が地面に現しとなるため、その部分を踏むなどすると防蟻層が容易に破壊されますので、施工中や建築中に人が踏むおそれのある箇所にシート第8回元筑波大学 土居 修一 4agreeable No.61 January 2022/1図1 帯状散布と面状散布図2 ポリエチレンフィルムの敷設「木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針・同解説」について土壌処理の方法(前編)
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