agreeable 第62号(令和4年4月号)
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ytisnetnIOOOO0す7。そのため、天然有機ハロゲン化合物を対象としたモニタリング調査の重要性は国際的にも認識され始めてきましたが、上記のPBDD異性体については法的な監視・規制の対象外であることから、海域の残留濃度や生物曝露に関する知見は依然として欠落しています。10agreeable No.62 April 2022/4T4CDD2000000150000010000005000003839Retention Time (min)1,3,6,8-TeCDDCl1,3,7,9-TeCDDClClClClClClCl404142図3 ムラサキイガイから検出されたダイオキシンのクロマトグラム引用文献1. 国立研究開発法人国立環境研究所, 侵入生物データベース2. Lowe, S., et al., 100 of the world's worst invasive alien species: a selection from the global invasive species database. Vol. 12. 2000: Invasive Species Specialist Group Auckland.3. Tanabe, S. and A. Subramanian, Bioindicators of POPs: monitoring in developing countries. 2006: ISBS.4. Alcock, R.E. and K.C. Jones, Dioxins in the environment: a review of trend data. Environmental science & technology, 1996. 30(11): p. 3133-3143.5. Van den Berg, M., et al., The 2005 World Health Organization reevaluation of human and mammalian toxic equivalency factors for dioxins and dioxin-like compounds. Toxicological sciences, 2006. 93(2): p. 223-241.6. Van den Berg, M., et al., Polybrominated dibenzo-p-dioxins, dibenzofurans, and biphenyls: inclusion in the toxicity equivalency factor concept for dioxin-like compounds. toxicological sciences, 2013. 133(2): p. 197-208.7. Haglund, P., et al., Brominated dibenzo-p-dioxins: a new class of marine toxins? 8. Arnoldsson, K., P.L. Andersson, and P. Haglund, Formation of environmentally relevant brominated dioxins from 2, 4, 6,-tribromophenol via bromoperoxidase-catalyzed dimerization. Environmental science & technology, 2012. 46(13): p. 7239-7244.Environmental science & technology, 2007. 41(9): p. 3069-3074.9. Goto, A., et al., Occurrence of natural mixed halogenated dibenzo-p-dioxins: specific distribution and profiles in mussels from Seto Inland Sea, Japan. Environmental Science & Technology, 2017. 51(20): p. 11771-11779.10. Masunaga, S., T. Takasuga, and J. Nakanishi, Dioxin and dioxin-like PCB impurities in some Japanese agrochemical formulations. Chemosphere, 2001. 44(4): p. 873-885.※英語名表記が多いため、横書にしております。3.ダイオキシン及び類縁化合物 前述したダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾーp-ジオキシン/ジベンゾフラン(PCDD/Fs)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCBs)の総称を指します。これらの有害物質は、特定の有機ハロゲン製剤中に不純物として混在するほか、廃棄物の焼却過程で非意図的に生成することが知られています4。また環境残留性や生物蓄積性がきわめて高く、ヒトや野生生物に対する毒性影響が危惧されたことから、2004年に発効した「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」の対象物質に指定されました。日本では2000年に施行された「ダイオキシン類特別対策措置法」による対策効果が既にあらわれ、PCDD/Fs及びCo-PCBsの環境排出レベルは大幅に低減しています。 近年ではPCDD/Fsに加え、臭素が置換したダイオキシン類縁化合物(PBDD/Fs)による環境汚染の動向に世界的な関心が寄せられています。PBDD/Fsは、PCDD/Fsに匹敵する強い毒性と類似の物理化学特性を示すことから5、2011年に開催された世界保健機関(WHO)と国連環境計画(UNEP)の専門家会合においてリスク管理に関する指針が国際社会に提案されました6。しかしながらPBDD/Fsの分析には高度な技術を要するため、調査地域は日本や欧米などの先進諸国に限定されており、モニタリング調査も特定事業施設内もしくは周辺環境(陸域・淡水域)の非生物媒体が主な対象となっています。 さらに最近の研究では、海域におけるPBDDsの天然生成が明らかとなっており7,8、魚介類に対する慢性曝露が懸念されています。実際にスウェーデン沿岸に生息するイガイからは、海藻類等が産生したと考えられる特定のPBDD異性体(1,3,7-/1,3,8-TrBDDs)が検出・同定されていま4.瀬戸内海のマッセルウォッチ このような背景から、筆者らの研究グループは2012年に瀬戸内5県(愛媛・山口・広島・岡山・兵庫)の16地点で採取したムラサキイガイとミドリイガイを対象に、PCDD/Fs及びPBDD/Fsの環境汚染モニタリングを実施しました9。その結果、全地点からPCDD/FsやPBDD/Fsの検出が確認され、瀬戸内海のイガイはダイオキシン及び類縁化合物に複合曝露されていたことが明らかとなりました。また異性体組成を詳細に解析したところ、イガイには1,3,6,8-/1,3,7,9-TeCDDs(4塩素化体)と1,2,3,4,6,7,8,9-OcCDD(8塩素化体)が高割合で蓄積していました。これらのPCDD異性体は、過去に水田除草剤として散布されていたクロロニトロフェン(CNP)やペンタクロロフェノール(PCP)の不純物であることが報告されています10。したがって、瀬戸内海沿岸には農薬起源のPCDDsが今なお残留し続けているものと考えられます。また興味深いことに、同一のイガイ試料からは1,3,7-/1,3,8-TrBDDs(3臭素化体)7,8が検出・同定されました。この結果は、天然由来のダイオキシン類縁化合物が沿岸域に遍在していることを示唆しています。さらに詳細な結果と考察につきましては、引用文献9をご覧ください。

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