agreeable 第62号(令和4年4月号)
4/23

ノコバシロアリの巣築45年の戸建て賃貸住宅は年がら年中半袖半ズボンで過ごしていた風の子の筆者ではあるが、九州といえどもやはり冬は寒い。特に今の住処である築45年の戸建て賃貸冬場の寝室など息が白くなるほどである。ついに寒さに耐えきれず、今年の冬は室内にテントを張り、その中で布団を敷いて寝ている。た時、その年の冬は暖かく感じ、さすがに南国はちがうなと思ったのもつかの間、2年目以降、不思議と冬も、タイ人はタイにも冬(寒い季節) があると言う中、私はタイには暑い季節と猛烈に暑い季節、あと、ほんの短い涼し過ぎる季節があるだけだと反論していた。しかし何回か涼し過ぎる季節を過ごすうち、確かに寒いと思うようになってしまった。       2製の巣ならば、温度計をブスッと刺では、エアコンなしではとても生活できず、しかし寒い時は寒い。タイに住むシロアリは、明らかに筆者より寒さに弱いと思われるが、巣の中いつものノコバシロアリのカートンして巣の中の温度を測ることはできるけれど、それではあまりにも芸が岐阜県で生まれ育ち、小学生の頃住宅は、とにかく夏暑くて冬寒い。思えば、はじめて沖縄に引っ越しになると寒く感じるようになった。タイの熱帯林で生活をしていた時猛烈に暑くてそれなりに寒いタイで快適に過ごしているのだろうか。ない。巣の中だけでなく巣の外でも同時に温度を測り、外の気温が上がり下がりするのに合わせて巣の中の温度がどうなるか知りたいと思ったのである。そうなると、温度計はプローブセンサータイプで、一定間隔で温度を記録するロガー機能があるものがよさそうだ(某通販サイトで2万円程度)。ただ、筆者は欲張って温湿度センサーのものを3台買ってしまった。買ってから気がついたのだが、センサーが丸出しでシロアリにかじられそうだし、防水ではないし、直射日光が当たると問題が起こりそうだしということで、センサーをラップで巻いてさらにアルミホイルで覆っておいた。ノコバシロアリの巣はやわらかいので適当に穴をあけ、センサーを巣の表面内側、巣の中心部、巣の外の合計3箇所に設置し、子供のおもちゃ用の油粘土を使って見た目にもきれいに固定した(写真1)。この油粘土は、野外でも数ヶ月くらいならほとんど劣化することなく使え、世界中のどこでも安価に入手でき、目立つ色で着色されていて視認性も良いしで、いつもとても重宝している。温度計の本体はタッパに入れ、タッパの側面に穴をあけてセンサーにつながるコードを外へ出してタッパごとジップロックの袋に入れて密閉し、こちらもアルミホイルで全体を覆っておいた。温度を15分毎に測定するように設定し、いざスタート。測定は一日96回、およそ1ヶ月間続けた。その後、温度計を回収したが、劣化した様子も野生動物に襲撃されたような様子もなく、データも無事に抜き出すことができた。早速グラフを書いてみると…、おおっ、ちゃんとそれっぽい温度が記録されているではないか(グラフ1)!温が41℃を記録した猛烈に暑い時があった。こりゃあ暑いね。41℃と言えば、2007年8月16日午後に岐阜県多治見市で当時の日本観測史上最高気温の40・9℃が記録されている。実にこの時、筆者はその多治見市の隣の市の駅で電車を待っていたのである。ホームから見える周りの景色がもやもやとしており、砂漠のド真ん中に突っ立っているような感覚になったことを今でも覚えている。その時、シロアリの巣の中心部はというと、なんと29℃!しかも、その日のグラフを眺めてみると巣の外の気朝は19℃と沖縄の真冬のような気温であったにもかかわらず、巣の中心部は23℃もあったのだ。本誌50号の「第1回シロアリすごいぜ!」によれば、シロアリが好む温度はおおよそ15℃から35℃くらいとあるので、ノコバシロアリにとってもおそらくこのくらいの温度が快適なのだろう。ノコバシロアリの巣はイエシロアリのようなカートン製の層状構造になっているが、巣の外側の層はほとんど使われておらず、シロアリは巣の中心部に集中している。しかるに、巣の外側の層が断熱材となり、巣の中心部の温度が維持されているんじゃないかと考えている。ちなみに1ヶ月の測定期間の平均外気温は25℃で、巣の中心部は26℃であった。この1℃の差は、シロ第5回agreeable No.62 April 2022/4温度計本体が入っている7時頃、外は19℃油粘土で固定している中心部23℃中心部29℃油粘土で貼り付けてあるラップとホイルで覆ったプローブ14時過ぎ、外は41℃〜シロアリは巣の中で快適に過ごしているのか(前編)〜長崎大学山田明徳写真1 ノコバシロアリの巣を測定中グラフ1 ノコバシロアリの巣の温度(青:巣の中心部、赤:巣の外、グレー:巣の表面内側)おとなのシロアリ自由研究

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る