agreeable 第62号(令和4年4月号)
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基礎断熱工法の場合の処理法土壌処理における注意事項処理を行う者(1)基礎内断熱の場合(2)基礎外断熱の場合の結果ですが)によると、シロアリの蟻道約12%となっていました。前編では、土壌処理の方法を土壌に防蟻薬剤を散布する方法、ベイト工法および防蟻材料その他による方法に分けて、新築および既存建築物に適用する上での要点を解説しました。ここでは、基礎断熱工法を採用した建築物での処理法について解説し、最後に、土壌に薬剤を散布する上での注意事項などについて述べます。処理の範囲は、床下に防湿措置を施す場合に準じます。但し、基礎断熱工法では床下換気を行わないことから、床下空間は室内空間とみなされますので、床スラブなどコンクリート表面への薬剤処理は行ってはなりません。土壌処理法としては、ベイト工法又は防蟻材料その他による方法から状況に応じて有効なものを選択して施工します。当協会で行った基礎断熱工法住宅の防除施工(シロアリ駆除とその後の防蟻施工)に関する実態調査(基礎内断熱を含む複数回答の侵入経路は基礎コンクリートと断熱材との境界部分約52%、断熱材内部の穿孔約31%、基礎外表面この調査の結果などを考慮して、基礎外断熱の場合は、まず基礎コンクリート打設時に断熱材を脱着しない型枠兼用とする工法等を採用することでコンクリートとの密着性を高めて、間隙からのシロアリの侵入を防止します。断熱材内部の穿孔を防ぐためにはその材質、構造等により防蟻性を有する断熱材(保存協会が認定している製品がある)を用いることも重要です。以上の措置を行ったうえで、当協会が定めている維持管理型しろあり防除施工標準仕様書に則った維持管理を行うか、有効な物理的防蟻材料及びその施工方法を併用します。万一、断熱材の穿孔によってシロアリが侵入しても、土台より上の構造躯体に被害が及ばないようにするために有効です。防蟻に効果のある工法・材料を単独で施工せず、複数組み合わせることが肝要といえます。建築物外周への土壌処理剤の散布、床下基礎スラブ表面等への薬剤散布は環境汚染、室内空気汚染の恐れがあるため行ってはなりません。表1に、土壌処理の方法について基礎の種類別にまとめて示します。土壌処理作業にあたっては、一般的注意事項として木材保存剤と同様に薬剤の取り扱いおよび保管に十分注意し、作業者の健康安全性はもちろん環境汚染を引き起こさないように適切な対応をしなければなりません。そのうえで、土壌に薬剤を散布する方法では以下に示す事項に沿って実施する必要があります。(1)降雨後や風が強いなど、土壌処理に向かない天候時には特に注意して施工を行い、場合によって(2)敷地内外の建築物、井戸・古(3)液剤は、床下にある配管・は施工を延期します。降雨時は土壌処理剤が環境に流出する恐れがあるため作業を行ってはなりません。降雨後処理を行うときは、土壌の湿潤の状態をみて、少なくとも24時間以上経過後に行うことが望ましいと言えます。湿潤状態では土壌が吸着する土壌処理剤の量が少なくなり効力が低下することもあるからです。また、土壌処理後も床板を閉じないなど雨水養生を行わずにそのまま放置しておくと、降雨時に作業を行ったのと同じ結果となってしまうため、施工後の養生を的確に行います。粉剤の場合では、施工後放置されたままだと強風時に薬剤が飛散したりするので、降雨並びに風の影響をうけない状態にして処理を行うことが重要です。井戸、下水、池、河川など隣接する周囲の状況等に注意を払い、適切な薬剤の剤型や処理方法を選定するなどして、井戸水等に土壌処理剤が流出しないよう十分注意することが重要です。また、地下水位が高く薬剤の地下水への流出の危険性が高い場合は薬剤による処理は行わず、薬剤を土壌に散布する処理法以外の土壌処理法を適用するようにします。作業時の周辺への配慮として、薬剤が敷地内外の樹木や池などに飛散しないように注意して行います。配線類の合成樹脂被覆層を侵すことがあるので、それらを養生して処理を行うか、必要に応じて液剤から粒剤等に切り換える対応が必要です。土壌処理は、以上述べてきたように、ひとたびその方法を間違えば、環境汚染につながるので、安易に作業をしてはなりません。環境汚染を引き起さないためには、施工現場や周辺環境の状況が適確に判断でき、その状況に合わせて適切な処理方法を見出せる能力が必要です。このためには、シロアリの生態、薬剤の知識、処理方法などに精通するとともに経験が要求されます。上記の十分な知識と経験とを身につけたしろあり防除施工士などが行うようにします。第9回元筑波大学 土居 修一        4agreeable No.62 April 2022/4既存表1 基礎の種類別の土壌処理方法基礎構造防湿層の有無防湿有り新築露地通常基礎*防湿有り露地新築既存新築既存基礎内断熱基礎外断熱* 通常基礎でもベイト工法又は物理的防蟻材料・工法の採用が可能です。処理方法薬剤散布:打設前に帯状及び面状散布薬剤散布:帯状散布薬剤散布:表面に帯状あるいは面状散布薬剤散布:帯状散布薬剤散布:コンクリート打設前に帯状及び面状散布ベイト工法又は物理的防蟻材料・工法防蟻断熱材とベイト工法又は物理的防蟻材料・工法併用ベイト工法又は物理的防蟻材料・工法「木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針・同解説」について土壌処理の方法(後編)

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