agreeable 第62号(令和4年4月号)
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飛散した胞子はどこへ(その四)7agreeable No.62 April 2022/4翌日横断幕をはがしたところ初回のような美しい結果は得られませんでしたが、よく見ると黒い布がうっすらと白くなっており、布の上に載せておいた定規をずらすとその跡がクッキリと現れました(写真4)。胞子は飛んでいたのです。さらに驚かされたのがカメラです。カメラはシイタケの上からレンズを下に向けた状態でセットしており、胞子はレンズの下を漂っているはずでした。ところがレンズとは反対側、カメラの液晶画面に胞子が積もっているのが確認できたのです(写真5)。おそらく横断幕は胞子の飛散をある程度防いだものの、横断幕の下部にわずかな隙間があったため横断幕内の空気が下から上へと移動し、胞子をカメラ上方へと舞い上げたのだと考えられます。ここまで来たら後へは引けません。四度目の挑戦です。横断幕では「ストップ!!胞子拡散」といかなかったため、ホダ木やカメラ全体をすっぽりと覆う箱を透光性のある素材で作りました。さらにシイタケのやる気を維持するため、箱の2箇所に小さな孔を開け一日数回ホダ木に水を供給できるようにします。さらに給水作業や胞子の飛散状況を確認できるよう孔の横に内部観察用の切り込みを開け、そこを空気を通さず光だけが通るようサランラップで塞ぎます。様々な工夫をこらした装置の写真を載せたかったところですが、写真を撮り忘れました。痛恨です。一方、箱の底には色紙を敷き、その上に前回同様一円玉を並べます。一円玉を置いた理由は次回のお楽しみとします。最後にカメラをインターバル撮影にセットし撮影開始です。もちろん上部の蓋を閉じるのを忘れずに。その後毎日数回水やりをしながら待った結果が写真6です。初回の写真ほど美しくはありませんが、同心円に近い形で胞子が落ちていったのが分かります。初回との違いは、シイタケを箱の中に入れたため、空気の動きが初回より少なかったことや、今回の子実体の紙面からの高さが最小で7cm、最大で10cmと初回より低かったことなどが考えられました。さらに興味深かったのは、容器の側面とカメラの液晶です。風が全く入らないように箱で覆ったにもかかわらず、箱の側面とカメラの液晶画面に胞子が付着しているのが確認できました(写真7)。おそらく箱内のわずかな温度差から空気の対流が起こり、その気流によって胞子が下方から上方へと移動したと考えられます。このようにシイタケを箱で覆    内部のわずかな気流で胞子が舞い風を完全に防いだ場合でも、い上がることが確認できたことから、日常的に風がながれている屋外では、胞子は風の流れにのって遠方まで移動していると考えられます。写真6 飛散した胞子の分布(その2)写真7 液晶面に付着した胞子(その2)写真3 横断幕とビニールで風を防ぐ写真5 液晶面に付着した胞子(その1)写真2 やるきまんまんの子実体写真4 定規と一円玉の跡

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