シロアリと原生生物原生生物の観察トリコニンファ・アギリス(ケカムリ)物に酸素の少ない住み場所とエサを与え、かわりに原生生物はシロアリにエネルギー源を提供します。1種のシロアリは、腸の中に1種から約20種程度の積は1μL程度ですが、その中におよそ数十万の原生生物が生息しています。さて、シロアリの原生生物にはさまざまな種がいます「トリコニンファ」の仲間を中心に紹介しましょう。ヤマトシロアリの腸内の原生生物は、顕微鏡があれば、比較的簡単に観察することができます。細いピンセットでヤマトシロアリの胸部をはさみ、よく先が尖ったもう一本の細いピンセットでお尻の先端を摘んでゆっくり引き抜くと、腸を抜き取ることができます。スライドガラスに0・5%の食塩水を1滴たらし、そこに腸を入れます。尖ったピンセットを使って腸を破り、中身を食塩水中に出して、カバーガラスをかけます。これを顕微鏡で観察すると、生きて泳いでいるたくさんの原生生物を観察できます。原生生物は無色透明なので、顕微鏡の「絞り」を絞ってみると見やすいです。今回から4回にわたってこのページを担当させていただく、茨城大学の北出と申します。このページではシロアリ研究者のみなさんがシロアリに関する色々な話題を紹介されると思いますが、私はシロアリの腸の中に共生している原生生物に関して書きたいと思います。ご存知のようにシロアリは木材を食べて生活しています。「シロアリ科」を除く多くのグループのシロアリは、食べた木材を自分が作る消化酵素だけで消化し、エネルギー源にすることができません。分解の重要な部分は、ヒトでいえば大腸にあたる後腸の中に共生している原生生物(核をもった単細胞の微生物)が行っています(図1、2)。原生生物は、シロアリが噛み砕いて飲み込んだ「パラバサリア」類と「オキシモナス」類という2つのグループに属しますが、酸素に弱く、シロアリ腸内から外に出ると短時間で死んでしまいます。シロアリは原生生,,iil2 顕微鏡でのぞくと、ヤマトシロアリの腸内にはたくさんの原生生物がうごめいていますが、その中ではかなり大型でおそらく最も見つけやすいものが「トリコニンファ・アギリitade&Matsumoto1993Socoboogy)。後腸の容(K原生生物を共生させています。どのような種の原生生物が共生しているかは、シロアリの種によって決まっています。日本で最も広範囲に分布するヤマトシロアリ(図3)の場合、未記載種も含め13種が報告されていますが、体(細胞)の形やつくりがとても多様であるのが特徴です。核を1個と鞭毛を数本もつ単純な体のつくりの種もあれば、1個の核とたくさんの鞭毛を持つもの、1細胞にたくさんの核があるもの、などがいます。おそらく、単純な体のつくりの祖先から、より複雑なものへと進化したのだと考えられています。このなかで、今回は木材片を細胞の中に取り込み、主成分のセルロースを分解して、酢酸にします。これをシロアリはエネルギー源として使っているのです。シロアリに共生する原生生物は、第1回茨城大学理学部 北出 理agreeable No.66 April 2023/4図2 オオシロアリの腸内の原生生物 矢印がユウコモニンファの1種。図1 オオシロアリの腸 大きく膨らんだ後腸(矢印)の中に原生生物がいます。図4 トリコニンファ・アギリス図3 ヤマトシロアリの創設初期のコロニーシロアリのお腹の中をのぞいてみよう-共生原生生物の話-
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