agreeable 第66号(令和5年4月号)
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DNAバーコード環境DNAのメタバーコーディング5agreeable No.66 April 2023/447-52(2017)HorisawaForestBomassUl...,Ji,   .,(1)  堀澤栄,agreeabe30(2) S2-3(2014)tilizationSoc12(2))。rDNAは広い湖沼水や土壌などに生息する生物を検出同)。今述べたrDNA遺伝子のように、広い生物に含まれている遺伝子の塩基配列情報をたくさん集めてデータベースにしておけば、次に未知の生物のDNAからrDNAをPCRで取得して、配列を調べ、データベースのなかで類似した配列を検索すると、この生物の名前がたちどころにわかります。以前にも書いたように、このような遺伝子配列を「DNAバーコード」といいます(1生物に有効ですが、それゆえにざっくりとした分類しかわからないことになります。そこで、生物の分類に合わせて、いろいろなバーコードが開発されてきました。植物なら葉緑体がもつ光合成に関与する酵素の遺伝子、動物ならミトコンドリアに含まれる呼吸に関係する酵素の遺伝子などです。いずれの場合もそのグループの生物が持っているはずの遺伝子がバーコードに使われています(表1)。現在はさらに細分化された生物グループに対してバーコードがたくさん開発され、例えばコケのバーコード、魚のバーコード、鳥のバーコードなどがあります。遺伝子のデータベースは日々充実してきており、より正確な生物の同定が可能となっています。定する方法として、環境DNAのメタバーコーディングが発達してきました。環境中に含まれる生物由来のDNA、つまり複数の生物のDNAが混ざっている状態からPCRでバーコードを増複すると、さまざまな配列が一緒に得られます。このような配列の異なる分子を1つずつ分析できる技術、次世代シークエンス(NGS)が発達したことによって、環境中の生物群を一気に明らかにできるようになりました。生物を環境から単離する必要もなく、DNAという分子を介して環境の生物群を知ることができるようになりました。木材腐朽の研究現場にもメタバーコーディング技術が使われ始めています。環境中における木材腐朽菌もさまざまな微生物が関わりながら、それぞれが消長しながら腐朽が進行すると考えられます。図3には腐朽木材の丸太より円盤状に試料を切り出し、それぞれの円盤からDNAを抽出してどのような真菌群集が形成されているか分析した結果を示しました(2丸太の根元の方(ディスク1)にはヒイロタケが優占した群集が形成されていますが、枝の方に向かって少しずつ群集構造が変化していく様子が明らかとなりました。このようにして、木材腐朽を複数の生物による現象として捉えることが可能になっています。図3 腐朽菌が発生した丸太の真菌群集の解析.赤い子実体を形成しているヒイロタケが根元の方(ディスク1)に密度が高く生息していることが示された.表1 DNAバーコードの例生物群バクテリアカビ・きのこ動物植物バーコード配列リボソーム小サブユニットrDNAリボソーム小サブユニットrDNAリボソームITS領域ミトコンドリア呼吸酵素(CO1)葉緑体光合成酵素(rbcLa)

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